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――仙波さんは裏金づくりを拒否してきた。

はい。私がニセ領収書の作成を指示され、拒否したのは24歳、もう半世紀も前のことです。そして2005年、55歳のときに現職警官として警察の裏金問題を告発し、記者会見を行いました。あのとき「おそらく私のあとには誰も出ませんよ、現職で顔を出して、警察の不祥事を告発する者は、絶対に出ません」って言ったのですが、結局そのとおりになりました。あれから20年経ちましたが、いまだに一人も出ていません。

――警察に入ってすぐに裏金に気づいたんですか。

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いや、最初はわかりませんでした。ある日、先輩が上司から呼ばれて、何か書きよるわけですよ、暗い顔して。それで、「先輩、それは何ですか?」って聞いたら、「お前もそのうちに分かる」と言われたので、僕はさらに、「何なんですか?」と食い下がったんです。

そうしたら、「裏金よ……」と。おそらく、ほかの人は上司から命令されたら、意味がわからないままニセの領収書を書かされるんでしょうけれど、僕は先に聞いていたので、上司から書けと言われても拒否し、絶対に書きませんでした。

同期トップクラスで巡査部長になったのに…

――れっきとした犯罪行為ですよね。

おっしゃる通りです。まず、ニセ領収書を作る行為は私文書偽造。その領収書をもとに、会計課員が公文書を偽造して税金をだましとれば、公文書偽造・詐欺罪に当たります。さらに、この金を警察官が使うとなれば、業務上横領のほか、脱税の罪に問われます。もとを正せば、そのお金は国民の血税ですからね。

こんなこともありました。あれは1973年、24歳だった私は同期の中でトップクラスで巡査部長の昇任試験に合格し、最年少で幹部会議に出席したんです。胸を張ってね。ところが、その会議の最後に、署長がこう言うんですよ「サンズイがないじゃないか。去年も今年もない、いかんぞ!」って。すると、みんな下向いとるわけです。

――「サンズイ」とは何でしょうか。