「裏金は組織を腐らせる諸悪の根源」
組織ぐるみの「裏金事件」が後を絶たない。昨年10月には自民党の派閥による裏金疑惑が浮上。政治資金パーティーの収入を政治資金報告書に記載せず、裏金化していた事実が明るみになった。7月には川崎重工業が、海上自衛隊の潜水艦修理などから捻出した裏金で海自隊員に利益供与していた事実が明らかとなった。
なぜ「裏金事件」は繰り返されるのか。そして、「裏金づくり」は組織にどのような影響を与えるのか。警察による組織的な裏金作りを現職警察官として告発し、定年退職するまで長年闘い続けてきた元愛媛県警巡査部長の仙波敏郎氏に話を聞いた。
――仙波さんは愛媛県警の現職警察官として警察の裏金問題を内部から告発し続けてきました。最近の裏金問題をどう見ていますか。
日本全国、裏金だらけだと改めて感じています。裏金は組織を腐らせる諸悪の根源だと思っています。官公庁も、大企業も、そしてもちろん警察も。本来裏金を取締まるべき警察が、裏金にどっぷり浸かっているため安心して作れるのです。
警察の裏金問題は、日本の組織が抱えている問題、体質を表す典型例として考えることができます。私が告発をしたのは19年前ですが、状況はその時と何も変わっていません。何らかの形で続いていてもおかしくありません。
たった一人で裏金問題を告発した警察官
――警察の裏金問題はどんな内容だったのでしょうか。
現在の警察制度ができたのは1954年です。愛媛県警では、その3年後の1957年には裏金作りを行っていたと見られます。当初は、地方の警察本部に単身赴任してきたキャリア警察官僚が、東京や家族のもとに帰る時、奧さんが赴任先を訪れる時の旅費を捻出するために始まったと言われています。
実際には捜査協力など依頼していないのに、架空の人物名で領収書を作り、経費として計上することで警察は裏金を作ってきました。これは愛媛県警だけのことではありません。