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大阪の福島区という都会の下町で、相当におせっかいな父親に育てられた宮本とは、見事に対照的である。

1社目では「やる気のない社員」として上司を困らせた

瀬川は大学を卒業すると、外資系のコンパック・コンピュータ(後のヒューレット・パッカード)に就職している。

研究室の仲間たちを眺め回して、自分は研究者には不向きだと判断した瀬川は大学院に進学せず、ビジネスサイド(営業職)で就職するという、異色のキャリアをスタートさせている。

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出席日数の件では、高校生らしからぬ交渉力を発揮した瀬川だが、コンパック入社当初は、ほとんどやる気のない働きぶりで上司を困らせていた。

「毎日、一所懸命にやっていたのは先輩社員の経費精算でした。経費精算はめんどくさいので、僕が代わりにやってあげて1回当たり5000円ぐらい貰っていました(笑)」

そんな瀬川のグータラ社員ぶりに業を煮やした営業マネジャーは、わずか1年で瀬川を別の部署に配置転換させることを部長に進言した。しかし、部長は何を考えたのか、入社間もない瀬川にノルマを与えて様子を見ることにしたのである。

ノルマが与えられ突如としてスイッチが入る

当時のコンパックの営業部隊は、他社から高給で引き抜かれてきたトップ営業マンの集団だった。営業部長以上は全て中途採用で、マネジャー以下もそんな猛者たちに育成された野武士のような集団。一匹オオカミである彼らは、何も教えてくれないし、育てようとすらしてくれなかった。

ところが、ノルマを与えられた瀬川は、なぜか、突如として、スイッチが入ってしまったのだ。これは瀬川に特徴的な行動パターンであることが後に判明するのだが、彼は、明確な目標が設定されると、異様な集中力と創造性を発揮する特性を持っているらしいのである。

「部長からノルマをもらって以降、優秀な先輩たちの商談を徹底的に観察して、自分との違いを分析しました。そうしたら、会話の瞬発力が決定的に違うことがわかったのです」