ドラマみたいな両家の顔合わせ
――両家の顔合わせは、東京で?
村田 顔合わせはねえ、京都です。まさに、この部屋です(「菊乃井 本店」の座敷の個室)。そのとき初めて、「え、こういうお店をやってるんだ」って。ちょっと自分がイメージしていた感覚と違うなと。
――建物もしつらいも静謐で趣があって。お部屋の窓から眺めるお庭も素晴らしいです。
村田 うちの両親なんて緊張しちゃって。僕もすごくしましたけど。
じつは顔合わせよりも前に、妻から「家族を紹介する」と言われて、僕はてっきり向こうの家に行くものだと思っていたんです。そうしたら、まずは女将さん(義理の母)と四条通の喫茶店でお茶をして、次に京都ホテルオークラ(当時)のフランス料理店で、初めて大将に会いました。そのときは、女将さんと、おっきい女将さん(義理の祖母)も一緒で、妻も含めて5人で食事をしました。
――ご自宅には、あえて招かれなかったのでしょうか。
村田 家に行くと必然的に店の前を通ることになるので、従業員の目があったからだとは思いますが、結婚して何年か経って、おっきい女将さんのところにお仏壇を拝みにいったときに、大女将さんがぽろっと言ったのは、「菊乃井の娘やって、言わんときよしって、紫帆に言うときましたんや」って。「そんなん言うたら、(相手に)逃げられますさかいに」「紫帆ちゃん、言わんときよし」って。
「あーそうですかー、ありがとうございまーす」って、部屋を出てきたんですけど。
――ドラマみたいですね。
面接みたいな、店の常務取締役との食事
村田 それと、女将さんに会うよりも前に、うちの店の常務取締役と東京で会いましたね。
――番頭さんのような方でしょうか。
村田 そうですそうです。あとから聞いたところ、「紫帆と結婚するやつと一回会っとけ」って、大将から何回も言われたらしくて。いまでもよく覚えてるんですが、日曜日のお昼に品川駅近くのレストランに呼ばれて出かけて、「お仕事は何をされているんですか?」とか、いろいろ質問されて。この人は誰なんだろう、よくしゃべる人だなあと思いながら、ビールを飲んで食事をしました。
――その次のステップとして、女将さんと四条通の喫茶店で。
村田 いま考えると面接みたいですね(笑)。
そのときはわかりませんでしたが、女将さんは毎日ものすごく忙しいので、お店の昼と夜の営業時間の合間に、わざわざ時間をつくって来てくれたと思うんですよ。ちょうど時間帯もそれくらいでしたし、簡単に自己紹介して、「どんなお仕事をされているんですか」という質問をされて、一瞬で終わりました。