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「お見合いを何十回もしているけどうまくいかない」

――そこから、お付き合いに至るきっかけは?

村田 なんだったかな、東京に行くからって、向こうから電話があったのかな。卒業後も仲間内のメールのやりとりに名前を見つけて生存確認はしていたのですが、おそらく同級生のなかで東京に住んでいたのが僕だけだったからじゃないでしょうか。いまから思うと、「菊乃井」の支店が赤坂にあるので、出張のついでだったのかもしれません。

 そうこうするうちに友だちとしての交流が始まって、よく電話で話すようになるなかで、彼女が「お見合いを何十回もしているけどうまくいかない」と。

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――何十回。

村田 30回か、50回くらいはやってたのかなあ。

©志水隆/文藝春秋

なんで結婚できへんのやろ

――結婚相手との出会いにお見合いは決して主流ではないなかで、老舗のお嬢さんならではのご事情があったのではないかとお察しします。

村田 親に言われていたみたいですよ。おばあちゃんが勝手にお見合いの予定を入れてくる、みたいな。なんでもいいから結婚せえ、という感じだったんじゃないですかね。

 僕はそのときに、なんで結婚できへんのやろって、思ったんですよ。「うまくいかないのはあなたの性格に問題があるんじゃないの」とか、半分冗談で話してたんですけど、お見合い50回しても結婚が決まらないんだったら、僕が結婚するわという気持ちはありましたね。お互い30歳を過ぎていましたし、適切な単語かどうかわからないですけど、適任だなって。結婚するなら絶対この人だっていう、強い気持ちがありました。

こんな世界があるとは想像もしていなかった

――結婚を意識されたときは、もう「菊乃井」の存在を?

村田 まったく知らない(笑)。さっきもお話したように、こんな世界があるとは想像もしていなかったですから。若さもあって、多少軽く考えていた部分はあるかもしれませんが、個人同士が好きになって結婚するんだから、これは僕らふたりの話なんだ、という発想しかなかったです。

――婿入りのお話は、どのタイミングであったんですか?

村田 入籍前だったと思います。僕はサラリーマンをやっていましたから、婿に入ってほしいといわれても、具体的には「苗字が変わる」という話だったので、別にそんなのどうでもいいじゃんって。自分の苗字が変わっても、人間が変わるわけではないですから。両親からも「いい大人なんだから(自分でちゃんと考えて)好きにしろよ」と言われました。