――両親から、「右手のことを聞かれたら、こうしなさい」的なアドバイスはありましたか。
Lisa 右手のことを聞かれて、ウザったいなとか、イヤだなとか思ったり、ちょっとでもトゲのある言い方とかされたら、言い返してやりなさいって感じで育てられました。さらに、「できないことがあれば、人の倍努力すればできるから」ぐらいのスパルタだったし(笑)。変に励ますというのもなくって。
「だから、あなたの子は手がこうなったんだ」両親が激怒した出来事
――両親はそれを実践してましたか。たとえば、Lisaさんの右手を見て、なにかを言ってくる者には毅然とした態度を取っていた?
Lisa 食ってかかるほうですね(笑)。宗教が絡んじゃってる人がいて。「水子の霊がどうのこうの」って始まって「だから、あなたのところの子は手がこうなったんだ」みたいなことを言ってきたらしくて。
その人はもともと友人だったらしいんですけど、さすがに両親は激怒して「二度と家に来んな!」ってドアをバーンって閉めたそうです。
――小学校に上がって、周囲からの見られ方は変わりましたか。
Lisa 小学校でもイジメはなかったですけど、体育の授業というものが出てくるじゃないですか。そこで「できないこと、意外にあるなあ」って。
小学校の体育という場面で、そういったことを初めて知った感じですね。たとえば、鉄棒とか。縄跳びは、自分で縄跳びの縄を右手に結んで、ブンブン回して飛ぶことができたんですけど。
そうやって、小さいなりに自分で工夫して、「よし、これでいけるぞ」っていろいろクリアしてたんですけど、鉄棒だけはほんとにダメだった。やっぱり、つかむことができないので。
なので、先生に「できないから手伝って」とお願いして、体を持ち上げてもらってグルっと回って。
日常生活では、自転車に乗れないことが“困りごと”だった
――小学校以降は、体育の授業がネックだったと。
Lisa 一番のネックでした。あと、音楽の授業でリコーダーを吹くじゃないですか。みんなは普通のリコーダーを使ってるんですけど、私ともうひとりの手を欠損した同級生の男の子だけ、片手用リコーダーを注文して。
それが、バカ高かったらしいんですけど。いろいろ部品が付いていて、リコーダーというよりクラリネットみたいな見た目でゴージャスなんですよ。
学校以外で困ったのが、自転車に乗れないこと。手がない子でも、すっごい練習して乗れるようになった子って、まれにいますけど。私の場合は、家が完全にクルマ族で。