「働く人にとって大事な人に褒められたら、その人はこの会社でやりがいを感じるんじゃないか」そう考えて2009年に発案したのが、「ブックギフト」プロジェクトだ。
実は、古本の買い取りを始めて以来、じわじわと中村さんの中で大きくなっていた課題があった。それは、破棄せざるを得ない本の存在。状態がよくても需要に対して出品数が多すぎると値段がつかない。そういった「捨てる本」は当初から半数ほどあったが、買い取り数が増えるとその絶対数は大きくなる。2009年当時、買い取り希望の本は1日約1000冊。このうち半数の500冊が「捨てる本」となり、中村さんの中で罪悪感が膨れ上がっていた。
「例えばハリー・ポッターもそういう状態だったんですけど、小学校に寄付したら喜んで読まれるんですよ。捨てなきゃいけないっていうことが、ある意味で説明がつかない状態になっているんです」
「儲かるためにいいことをしよう」
「ブックギフト」は、このようないわば「捨てる本」を、地域の老人ホームや保育園に寄付することで、働く人のやりがいにつなげようというプロジェクト。
地域にもスタッフにも好評だったが、すぐに次なる課題にぶち当たる。本業で忙しくなると、売り上げに繋がらないブックギフトの優先度が下がってしまうのだ。当時の従業員はまだ20名程度。小さな企業の中で、売り上げにつながらない事業を続けることは難しかった。
「社会的にいいことでも、本業に組み込んでいかないと、自分たちみたいに小さい会社はあっという間にできなくなっていくと思ったんです」
こうして2010年、自分が応援したい団体に買い取り額を寄付できる仕組み「キフボン」をスタート。売り上げにつながる買い取り業務に社会的価値を加えたことで安定して社会貢献事業を継続できるようになった。現在は「チャリボン」として約200の団体が支援先として登録され、2024年6月までの累計寄付額はおよそ7億4000万円にのぼる。