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ところが組織が大きくなってくると、その居場所に変化が起きる。

会社設立から2年ほどたったある日のこと。東京で電車に乗っていた中村さんは、急に息ができなくなって電車を降りた。「おかしいな」と思いながらもう一度電車に乗るが、再び息苦しくなって電車を降りてしまう。

各駅停車で10駅分を1駅ごとに降りながら、なんとか自宅に帰り着いた。家に帰ってもじっとしていることができず、走り回ったり自転車に乗ったりして肉体を限界まで疲れさせないと眠れない。何が起きているかわからなかった。

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社会から逃げたはずの場所で“社会”ができた

当時は会社の規模が大きくなり、関わる人や会議とともに経営のストレスが増えていた頃。社長として挨拶をしなければいけない全社会議の直前にもパニックになった。同じような症状が起きるたび、仲間には「お腹が痛くなった」などと言って誤魔化した。

中村さんによると、躁うつ病では、躁とうつの間の混合期や、躁が行き過ぎたときなどにパニック症状が出ることがあるという。そんなことなど知らない当時の中村さんは、「パニック障害なのかな」とも考えたが、周りには言えなかったし、言ってはいけないような気がした。

同じ頃、長野の倉庫スタッフの一人が会社を辞めることになる。それまでもやむを得ない事情で離れていくメンバーはいたけれど、その人は「自分が会社のなかで活躍できているかわからない」と悩んだ末に辞めていった。

元々友達同士で始めた会社ということもあり、最初は組織らしいルールや序列はなかった。ところが次第に人数が増えていくと、どこからともなくマネジメント体制や評価制度が持ち込まれ、自分自身も含め、居心地の悪さを感じる人がでてきてしまっていた。

社会から逃げて自分たちの居場所をつくったつもりが、いつのまにか自分たちの会社自体が社会性を持つようになっていたのだ。

「やりがい」のために「捨てられる本」と向き合う

倉庫スタッフの離職がショックだった中村さんは、「働く人のやりがい」について考えるようになる。答えを求めて読んだ本には「褒めて育てる」というアドバイスがあったが、働いてほしいからと無理に褒めることには躊躇があった。