彼はヨーロッパチャンピオンに6回もなった強豪だ。話を聞いて驚いたのは、カロリーナ・フォルタン女流初段の夫だったことだ。
「カロリーナとは2009年のヨーロッパ選手権で知り合いました。ヨーロッパに女性の将棋プレイヤーはいますが、多いとは言えません。将棋を始めて良かったことは何かって? それはもちろんカロリーナに出会えたことさ!」(同前)
前出のフランス将棋連盟会長のファビアン・オスモンさんは、かつては選手だったが今回は応援で駆けつけた。
「フランスで将棋大会に集まる人は、200人ほどいます。私は26年前に初めて日本に来たとき、空港から将棋会館に直行しました。将棋盤を買いたかったのです。購買部で見ていたら他のお客さんに話しかけられて、『羽生さんを知っていますか?』と聞かれました。もちろん知っていますと答えると、『後ろにいますよ』と言われて驚きましたよ! 一緒に写真を撮らせてもらえて、それがすごく良い思い出です」
棋士たちの海外普及
将棋連盟の「東南アジア地区将棋大使」を務める小林健二九段は、東南アジアや南アジアでの普及に力を入れており、シンガポール、マレーシア、タイ、香港などへこれまで100回以上も足を運んできた。
「私は棋士になった頃から、A級に上がったら海外普及を始めようと決めていました。29歳でA級昇級を果たして、それから38年くらいになりますね。アジア各国で将棋大会を開催しますと、参加者の7~8割は現地滞在の日本人で、ローカルの方は2~3割です。海外の方の比率を上げたいと頑張ってきましたが、まだ現状はこんな感じです」
ベトナムなどでは中国将棋のシャンチーを楽しむ人たちが公園などで見られるが、全体では囲碁の愛好者が多い印象だ。
「東南アジアのほとんどの国には支部があります。コロナ禍前にはそれほど強い人はいませんでしたが、最近ではタイやベトナムにも普通にアマ四段クラスの人が出てきました。インターネットで将棋を楽しむ人が増えたことにより、若い世代が急激に実力を伸ばしています。それでも僕たちが行くと、ネット世代の彼らも対面で指すことを喜んでくれます。やっぱり盤に向かい合って1対1で対局するのが一番良いと思うんですよね」