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「どうぶつしょうぎ」は北尾女流二段が子どもたちへの普及を目的に考案し、2009年に製品化された。将棋の簡易バージョンのゲームで、12マスの中に、それぞれ4枚ずつの駒をおいて戦う。動物の絵柄で表されているので、まだ漢字が読めない子どもや海外の人たちにも分かりやすく、広まりを見せている。青年海外協力隊のメンバーが持っていって、セネガルやトーゴといった国で広めてくれた例もあった。

 これまでにオリジナル商品だけでも国内で60万セット以上が販売され、「鬼滅の刃」や「ドラえもん」など人気漫画とのコラボなどを含めると100万セットを超える。マクドナルドやロッテリアのセットのおまけにもなり、海外でのライセンス契約(ポーランド、台湾、フランス、ウクライナ)まで含めると、300万セット以上が手に取られたことになるという。来年にはディズニーとのコラボが決定しており、ミッキーマウス・バージョンが発売される予定だ。

国内外でアレンジされた様々な「どうぶつしょうぎ」中央がオリジナル

 北尾女流二段は毎月普及活動で国内の保育園や小学校を回っているが、学童保育の約半数の子どもたちが「どうぶつしょうぎ」を知っている手応えがあると話す。今年プロデビューした岩崎夏子女流2級(13歳)は保育園にあった「どうぶつしょうぎ」が将棋を始めるきっかけだったと話している。

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 市販化から15年ほどで「どうぶつしょうぎ」がここまでの広がりをみせた理由は何か?

「海外で普及活動をしてきて、将棋が広まりにくかったのは言語依存が大きいと感じました。欧米の人たちにとっては、漢字が覚えにくいんですね。絵柄を動物にして、駒の数を少なくしてゲームをシンプルにしたことで、入門者が入りやすかったと思います」

世界約30カ国を訪れて普及活動

 まだプロデビュー前だった1999年、第1回国際将棋フォーラムに記録係として関わったことが、国際普及に目を向けるきっかけになった。

 女流棋士になった後、2010年に「どうぶつしょうぎ」の販売と将棋の普及活動を目的に「株式会社ねこまど」を設立し、同年に最初の海外普及としてフランスを訪れる。このときには日本将棋連盟から提供された将棋の盤駒100セットを現地へ運び、集まった人々やフランス将棋連盟に寄贈した。パリでは在仏日本大使館主催で、チェスの元ヨーロッパ女子チャンピオンとエキシビションとして将棋とチェスの同時対局を行った。またカンヌのゲーム祭りではフランス将棋連盟が出展したブースに参加、小学生らが次々に来場して10面ある将棋盤は常に満席状態だったという。