【5区】駒澤大・山川きっかけで“こめかみファイテン”が大流行
“二代目山の神”柏原さんがM-1に一番近いと言っていたのが実は5区です。
あらゆる人が、どうしたら5区をうまく走れるかを柏原さんに聞きに来るそうです。山登りという箱根にしかないコースをどう攻略すべきか、M-1と同じく特別な戦略を用意する必要があるからでしょう。
ただ、5区攻略法を聞かれた柏原さんの答えは1つで「100パーセントの力を出せるようにコンディションを整えておくこと」。
柏原さんは東洋大時代の4年間、毎晩小田原から芦ノ湖のゴールまでを脳内再生してから寝ていたそうです。それを続けた結果、4年目の5区では、走っているときに次に足を置くべき場所が見えたと言います。つまり、走るというよりは見えたところに足を置くだけという状態だったと言うんです。
メソッドではなく、とにかく100パーセントの力を出すために準備を尽くすこと。実は柏原さんの考え方は、もっともM-1的発想から遠いのかもしれません。
さて、今大会です。
2022年の箱根駅伝5区で好走を見せ、今季の全日本大学駅伝では日本人歴代2位のタイムで区間賞を獲得した駒澤大の山川拓馬選手が5区にエントリー。関係者は「新山の神誕生か!」とざわつきました。
そこで「STOP山の神!」とばかりに、各大学が牽制し合うことに。國學院大の前田康弘監督が「平林選手の5区もありえる」と発言すれば、城西大の櫛部静二監督は前回2区を走った斎藤将也選手を5区に配置。
さらに前回話題をさらったメガネランナー「山の名探偵」こと早稲田大の工藤慎作選手、そして青学大の「若の神」こと若林宏樹選手が配置され、稀に見る山の神候補が集結したわけです。
その戦いを制したのは、1時間09分11秒の区間新記録を叩き出した若林選手。今大会の最高傑作を見たと感動しました。
山川選手は新年度から駒澤大の主将になることが決定。来年は青学から王座奪還を目指してぜひ頑張ってほしいと思っています。
さて、その山川選手について1つお伝えしておきたいことがあります。
陸上選手の体によく貼られている丸いシールをご存知でしょうか。ファイテンが出しているパワーテープというもので、貼ると血行が良くなることから、これまでは疲労の溜まる足や、呼吸が楽になるよう首筋に貼るのが一般的でした。ところが今年の箱根ではこめかみに貼る「こめかみファイテン」が増加。
実はこれを駅伝界で最初に導入したのが山川選手なんです。パリオリンピックで柔道の角田夏実選手がこめかみにつけているのを見て、「あれはいい」と主将の篠原倖太朗選手のアイデアで取り入れたところ、夏合宿の30km走での集中力が上がったそうなんです。
そこで出雲駅伝でもこめかみファイテンで出走したところ、話題になり、都大路(全国高校駅伝)、ニューイヤー駅伝でも真似する選手が続出。今回、駒澤大の佐藤圭汰選手もこめかみファイテンでした。
ちなみに僕もやってみましたが、仕事の集中力も上がるので、ぜひ試してみてください(個人の感想です)。
構成/林田順子(モオ)