障害や病気のある兄弟姉妹がいる子どものことを「きょうだい児」という。月まるさん(40代女性)は、5歳下の妹に重度知的障害と自閉症があり、小さい頃からお風呂やトイレの世話が日課に。さらに妹の障害が学校でのイジメの原因になったこともあった。
家庭でも妹の事情が最優先され「ヤングケアラー」として世話をするかたわら、母親の「子どもをエリートにしたい」という気持ちは月まるさんに向けられることに。さらに教育虐待だけでなく身体的暴力まで振るわれるようになっていった。その過酷な経験について話を聞いた。(全3回の2回目/最初から読む)
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「自分の子どもを同級生より優秀な学校へ入れたい」という母の思い
──小学校6年生でイジメを受けながらも、中学受験をされていますよね。受験は親の希望だったのでしょうか?
月まる 母は高卒で、結婚が遅かったこともあり、「自分の子どもを同級生より優秀な学校へ入れたい」という思いをもともと持っていました。
そこへ障害のある妹が生まれ、父方の親族からは「こんな子を産んで」と言われることもあったそうです。そういうことが積み重なって、私をエリートコースに乗せなければという思いを強く持っていました。
──塾なども通っていたんですか。
月まる 週7日、毎日塾に通わされていました。
勉強も塾も嫌いではなかったのですが、週4で大手の塾に通い、加えて2つ別の塾に通わされると、宿題が多すぎて到底終わらないんです。それでも母が期待するペースで進んでいないと殴ったり蹴ったりされるのも日常でした。
──大人でも体調を崩しそうです。
月まる 夏ごろから倦怠感や息切れが出て、顔もむくんできたのですが親には聞いてもらえず、結局10月に倒れました。病院でネフローゼ症候群と言われ、1カ月半の入院をすることになりました。
──秋頃ですと、中学受験も大詰めですよね。
月まる 親が気にしていたのは出席日数でした。受験予定だった中学は、小6の2学期までの出席日数の提出が必要だったので。入院したのが土曜日でしたが、母が無理に病院と交渉し、翌週の月曜日には院内学級に転校手続きが終わって、出席日数が減らないようになっていました。