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――大会当日、観客席に入った小林さんは警察官の制止を振り切ってステージに上がったことにより不法侵入、公務執行妨害などの容疑で逮捕されてしまいます。日本でもニュースになりましたが、どうしてそのような行動を取ったのでしょうか?

小林 今だとソーシャルメディアがあるので、大会に出場できない理由を伝えることができるじゃないですか。でも当時は主催者側がプレスリリースで公表したことだけがニュースになるんですよね。「契約の都合上、小林は今年出ません」というだけで、僕の行動に問題があるようにみえたとしても、それが全部真実になってしまう。このまま、自分の言葉まで奪われたまま終わっちゃっていいのか。どうにか伝える方法がないか考えて、それが当日その場所に行くことだったんです。

 

 当日の空気については、僕よりマギー(小林さんのパートナー)のほうがよくわかっているかもしれない。彼女は当時僕のアメリカでの活動を支えてくれるチームの一員でした。

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「彼に食べさせろ」とみんなが叫んでいた

マギーさん(以下、マギー) 多くのファンが小林を見にきているのに、小林がステージにいない。それが騒ぎになっていたんです。

小林さん(左)と、小林さんの妻・マギーさん

――実際、小林さんの不出場によって観客数は前年から半減していたそうですね。不出場を知らずに来た観客には疑問だったはず……。

マギー それで、考えたんです。チームで彼を隠しながらステージの真ん中まで連れて行って、突然登場させる。注目させて、「彼になにがあったの?」って聞かれる行動をしようと思ったんです。「なぜ小林がいないんだ」と騒ぐファンやカメラマンたちが彼を見つけると、「Let him eat(彼に食べさせろ)」ってみんなずーっと叫んでました。

小林 Tシャツにメッセージを書いて、写真撮られてニュースになれば後々真意を聞きにきてくれるだろうと。