がむしゃらの時と同じように、できる限りお客さんが気持ちよく過ごせるように接客する。どんなに忙しくても、笑顔で話しかける。
「お客さんがラーメンを食べて帰るときに、なんか元気なっとる、なんか心が軽なっとる、そういうことに対して僕らはお金もらってるんです。だからお客さんに全神経を集中するし、非日常的な雰囲気を作ったり、気持ちよく過ごせる環境を整える。そういうことも含めて、自分という人間を売るしかない。もうすぐAIが人間よりおいしいスープのレシピを作る時代が来ます。AIにできないことを僕らはやっていかないと」
常連客が19時間並ぶ理由
冒頭に記した、19時間待ちのお客さんは遠山太一さんという。年間300杯から400杯は食べるラーメン好きで、ぶたのほしがオープンした年に初めて来店している。それから6年が経ち、全国で2000杯前後のラーメンを食べてきた遠山さんが「食べ歩きしてきたラーメンのなかで一番」と断言するのがぶたのほしだ。その評価は、味だけにとどまらない。
「アキさんぐらい熱意のあるラーメン店主にはなかなか出会えないっていうのはもちろんなんですけど、アキさんってオシャレやし、音楽もオシャレやし、工場をリノベーションしたスタイルとかも、すごい好きやし。ぶたのほしって、普通に食べに行っても2時間は待つんですよ、でもあの空間におるっていうのが居心地いいんですよね」
オープン以来、「ここは僕の店じゃありません。皆さんのお店です。僕は皆さんに雇われている職人です。だから肩書きが工場長なんです。皆さんがこの店を盛り上げてください」とお客さんに伝えている髙田さん。
その徹底した「お客様第一主義」は、ラーメンも変える。髙田さんは基本的に「自分がおいしいと思っているものを出す」スタンスだが、オープンした時から多かった「ぶたのほしのラーメンにニンニクをトッピングしたい」という声を無視しなかった。