ラーメンがつなぐ縁
10カ月かけて探し歩き、ようやく出会ったのが、フラリと入った不動産店で紹介された、もともと工場だった物件。JR尼崎駅から徒歩10分ほどでありながら、準工業地帯で豚骨のにおいも行列も問題なしという好条件だった。
しかし、手持ちの資金が圧倒的に足りなかった。2009年6月に働き始めてからずっとアルバイトだったため、120万円しか貯金がなかった。それは、一度ガンの手術をした時に入ってきた保険金だった。
ある金融機関に工場のリフォームと運転資金に必要な1000万円の借金を申し込むと、最初の担当者にはどう頑張っても800万円しか出せないと言われた。しかし、途中で代わった担当者が大和郡山の無鉄砲がむしゃらに通っていた人で、「あなたのこと、知ってますよ。任せてください」と1200万円の融資を通してくれた。
加えて、不動産店のオーナーの息子が「がむしゃらのラーメンを食べたことがある」という偶然から、家賃は格安、保証金も安くしてもらうなど優遇してもらった。
「こんなことある? ってぐらい、うまいこといき過ぎました。僕の知る限り、利害の関係のない人がこうやって乗っかってくる事業って成功するんです。これは俺の店、いけるんちゃうかなと思いましたね」
AIにできないこと
2018年1月20日、ぶたのほしオープン。メニューはとんこつラーメンと、さかなとんこつラーメンの2種類。がむしゃら時代に探求した独自のスープがベースになっているが、それだけで勝負しようとは考えなかった。
「(おいしい)味が作れたから偉いわけじゃない。僕は自分のラーメンがおいしいと思ってるけど、もっとおいしいところはいっぱいありますよ。そのなかでうちに来てもらうにはどうしたらいいかを考えるんです」
パッと見ではラーメン店と思えないほどスタイリッシュな内装。音が「上から降ってくる」ように、お店の高い位置に設置した高級スピーカー。そのスピーカーから流す音楽も、髙田さん自身がセレクトしている。15時の閉店後には、毎日数時間かけて清掃する。