1ページ目から読む
3/12ページ目

29歳で手取り1500万円の営業部長に

髙田さんが「こういうことか」と肌で感じたのは、大学生の頃から何度も読んだ松下幸之助の本に書かれていたことだ。

「松下幸之助は、人とモノとお金のダムを作るのが経営と書いています。先のことを考えずに人、モノ、お金を使うのではなくて、ダムを作って、貯めたなかから必要な分だけ活用する。使った分が常に溜まるような仕組みと工夫と努力をしなさいという内容です」

髙田さんには、本部長を支える分厚い顧客層が、ダムになみなみと貯まる水に見えた。

ADVERTISEMENT

厳しい本部長のもとで鍛えられた髙田さんは、凄腕の営業マンとして成り上がっていく。29歳で営業部長に抜擢され、給料は手取り1500万円、さらに会社から支給された経費用のカードを自由に使うことが許された。183センチの長身にアルマーニのスーツを着込み、京都の繁華街を闊歩(かっぽ)していた男はしかし、まだ満足していなかった。もっと儲けたい――。

欲望に燃える髙田さんが目を付けたのは、孫正義だった。孫正義とソフトバンクに関する書籍をすべて読み、スケールの大きさに感嘆した髙田さんは、決意する。

「この人に全財産を賭ける」

絶望のリーマンショック

2000年4月、日本のITバブルが崩壊し、一時期、4万円がついていたソフトバンクの株価も大きく下落した。その頃に株を買い、反転したタイミングで売った。預金通帳には、1億円を超える残高が記された。この時、髙田さんは原点に返る。

「これを元手に、トレーダーになろう」

2003年、35歳の時にアパレル企業を辞めた髙田さんは、デイトレーダーとして株の売買を始める。この時も、松下幸之助の「ダムの経営」を取り入れた。ブログを開設して、リアルタイムでなんの株をいくら売り買いしたのかを記し、1日の終わりの収支や反省点も明らかにする。狙い通り、右肩上がりでPVが増えていったタイミングで、有料会員限定のコンテンツに切り替えた。すると、200人ほどが会員になった。