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しばらくすると、また大将から連絡があった。東京に無鉄砲の支店を出す、大和郡山の店長を連れていくという話で、「あきちゃん、大和郡山の店長しな。ちょっと面接するわ」。

面接の日、「スープ作ってみて」と言われた髙田さんは、緊張しながらも大阪店で学んだスープを出した。それを飲んだ大将の顔色が一瞬で変わる。

「あきちゃん、なんでスープ作れるん?」

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先述したように、無鉄砲でスープに触ることを許されているのは、店長のみ。ギクッとした髙田さんだが、大阪店の店長のことを高校生の頃から知る大将はなにが起きたのかすべて悟ったような表情をした後、特に問い詰めるでもなく、「店を黒字にしてくれ」と言い残して、東京に向かった。

店長としての執念

2010年6月、大和郡山の支店「がむしゃら」(元「豚の骨」)の店長に就任。モノを売る、売り上げを伸ばすのは得意分野だ。髙田さんはスタッフに「一緒に売り上げを伸ばそう」と呼びかけ、とにかく褒めて、褒めて、褒めまくって働く気持ちを盛り上げた。

トイレ掃除、ゴミ捨ては自分でやり、店をピカピカに磨き上げ、「皆さんはお客さんに集中してください」と伝えた。お客さんにも、アパレルで働いていた時に鬼の本部長から教わったように接した。

「常連さんの名前を覚えて、名前を呼んで『いつもありがとうございます』と言うのはもちろん、常連さんが友達を連れてきたら、その人の顔を立てるように話しかけます。お客さんがスープを残して出ていったら、追いかけて、なんで残したのかを聞きました。そのお客さんのことを覚えておいて、次に来た時に、『あの時はすいません、今日はちゃんと改善しますので』と伝えます。そういうことを、コツコツ、コツコツ続けました」

クビになるかもしれなかった「事件」

髙田さんが店長に就任してから、右肩上がりで売り上げが伸びた。その背景には、クビになるかもしれなかった「事件」もあった。

豚骨と水しか使わない無鉄砲のスープは野性味が特徴だが、髙田さんはそれを苦手にする女性客が多いのではと仮説を立てた。そこから骨の配合など試行錯誤を重ね、3、4年目に入った頃には「めっちゃどろっとしてるのに上品」なスープに仕上がった。