スポンサーによる女流棋戦の活性化

 感想戦後には西山の記者会見が行われた。そこで再挑戦について問われた西山は「今日のことだけを考えていたので、今後のことは気持ちを整理してから」と、具体的な明言はしなかった。また五番勝負を通して得られたものを聞かれると、「多くの注目に対して見合った将棋、納得のいく将棋を指そうと取り組んだことで、将棋に向かう時間が多く充実できました」と答えた。

 そして、これからの夢について尋ねられると、小考してから「落ち込んでいる暇もなく女流のタイトル戦が始まります。女流棋戦は多くのスポンサーに活性化させてもらって、魅力が出てきました。自身もそういうところに少しでも携わって行ければと思います」と語った。

「スポンサーによる活性化」は現在の女流棋界を象徴している事象かもしれない。女流棋士にとって、対局と双璧にある仕事が普及活動だ。動画中継の聞き手を務めることなどもその1つである。人気のある番組の聞き手は実入りも多いとされる。ところが、そのような仕事を最近では女流棋士が断ることもあるそうだ。その理由が「研究会があるので」と。

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将来の女流棋界

 対局で結果を残したほうが、より実入りがよくなるということらしい。スポンサーが増えたことで対局に向き合う機会が増え、その結果として実力が向上するのはプロ競技としてあるべき一つの形だろう。普及活動についても、以前はさほど行う機会がなかった女流棋士にスポットが当たって新たな開拓があるのは悪いことではないはずだ。

 西山と福間香奈女流五冠の2強に対して、割って入ろうとしている最有力候補が中七海女流三段だ。奨励会三段リーグ経験者が席巻している現在の女流棋界だが、棋戦の充実によって女流棋界のみから編入試験に挑むまでに至る女流棋士が、将来には現れるかもしれない。そのことがスポンサーに対する一つの恩返しになると思う。

写真=石川啓次/文藝春秋

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