先日、津軽半島を旅する機会があった。津軽といえば尊富士、吉幾三、そして太宰治である。この3人、まるで共通点もなさそうなのに、金木という津軽半島の小さな町の出身だというから、なんとも不思議なものを感じずにはいられない。

 そうした中でも、やはり津軽といったら太宰治のふるさとという印象が強い。小説『津軽』執筆のため、太宰は1944年の初夏にふるさとを訪れ、津軽各地を巡った。そして、それから4年後の1948年6月、太宰は自宅のあった三鷹の町を流れる玉川上水に入水自殺している。だから、三鷹も津軽と同じく太宰治と縁の深い町、というわけだ。

中央・総武線“ナゾの終着駅”「三鷹」には何がある?

「三鷹」が抱える2つの“悩ましさ”

 かつて太宰が暮らした三鷹の町の玄関口・三鷹駅は、なかなか葛藤の多い駅だと思う。きっと、中央線ユーザー、それも三鷹以西に居を構えているような人ならば、きっと首肯してくれるのではないか。

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 いちばんの葛藤は、三鷹駅が中央特快の停車駅であるということだ。快速との乗り継ぎができるようにはなっているのだが、これが実に悩ましい。

 都心方面の中央線に乗っていて、三鷹駅で快速が中央特快の待ち合わせ。少しでも先を急ぐならば中央特快に乗り換えるべきなのだが、実のところ新宿駅への到着時間は5分ほどしか変わらない。

 運良く座席を得ていれば、そのまま快速に乗り通すべきか、それとも5分を惜しむべきか。そんな葛藤に直面することになる。

今回の路線図。中央・総武線の終着駅「三鷹」は、中央特快の停車駅。

 もうひとついうと、中央線沿線を代表する町としてまず名が上がる吉祥寺駅。駅周辺の繁華街とメンチカツ、そして焼き鳥。井の頭公園もよく知られ、中央線文化の最先端を走る町だ。

 そんな吉祥寺は三鷹のお隣の駅なのだが、中央特快は吉祥寺には停まらない。乗車人数は三鷹駅より吉祥寺駅の方が4万人も多いのに。このあたりも、まさに三鷹という駅が葛藤を抱えていることの証左といっていい。