線路沿いを西に歩くとこの町のシンボルが見えてきた

 かつての軍需工場への引き込み線跡に向かって線路沿いを西に歩くと、線路と車両基地をまとめて跨ぐ巨大な跨線橋が見えてくる。太宰治が散歩などでしばしば足を運び、好んでいたという跨線橋だ。

 

 1929年、この地に車両基地を設けるにあたり、町の南北の往来のために国鉄が建設。長らく三鷹のシンボルとして愛され、子どもたちが行き交う電車を眺めるスポットにもなっていた。

 そんなシンボルも、老朽化によって2023年12月に閉鎖。現在は撤去工事の最中だ。一部は記念に保存されることになるという。そんな跨線橋から太宰も見下ろしたであろう中央線も、絶え間ない変化にさらされている。この春には、ついにグリーン車がお目見えするのだ。

ADVERTISEMENT

 となれば、中央特快に乗り換えるか、それとも快速で座るチャンスを狙うか……などといった葛藤からは解放されるのだろうか。グリーン車とて料金を払っても必ず座れる保証はないから、なんともいえないところ。激しい混雑でおなじみの中央線、座席を巡る葛藤が止むことはなさそうだ。

 そんな中央線のグリーン車、3月14日までは料金不要で乗ることができる。機会があれば、ためしに乗りにいってみようと思う。グリーン車から見る中央線の沿線風景は、いつもとちょっと違って見えそうだ。

写真=鼠入昌史

◆◆◆

「文春オンライン」スタートから続く人気鉄道・紀行連載がいよいよ書籍化!

 250駅以上訪ねてきた著者の「いま絶対に読みたい30駅」には何がある? 名前はよく聞くけれど、降りたことはない通勤電車の終着駅。どの駅も小1時間ほど歩いていれば、「埋もれていた日本の150年」がそれぞれの角度で見えてくる——。

 定期代+数百円の小旅行が詰まった、“つい乗り過ごしたくなる”1冊。

ナゾの終着駅 (文春新書)

鼠入 昌史
文藝春秋
2025年3月19日 発売

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。

次のページ 写真ページはこちら