悲惨な戦場描写は必要だ

深緑:浜辺美波さんが真っ逆さまになるのも、すごく怖かったです。キャーって言いながら、人がそのまま落っこちて。

山崎:本当は、人が落ちていったところがどうなったのかも見せたかったんですけど、そこまでやっちゃうとちょっとやばい……。

深緑:それは生々しいですね。

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山崎:ゴジラは子供に見てほしいじゃないですか。トラウマを植え付けるような映画に親は連れていってくれないだろうなと考えると、境界線が難しかったですね。

深緑:でも、その気持ちはちょっと分かります。私も戦争ものをよく書いているんですけど、ちゃんと戦場の事実を書きたい、見せたいと考えていて。

『スタッフロール』深緑野分(文春文庫)

山崎:戦場でいかに悲惨なことが起きているのかというのは書くべきだと思います。よく文学でも、映画でも「全部は見せずに想像させることが正しいんだ」という意見があるじゃないですか。もちろんそれは正論だと思うんだけど、そう言って見せないでいると、見せなきゃ伝わらない人には伝わらないわけですよ。

深緑:以前、『戦場のコックたち』という『バンド・オブ・ブラザース』に影響を受けた小説を書いたんです。第二次大戦のヨーロッパ戦線で日常の謎ミステリをやるという内容で主人公がコック兵なんですが、タイトルからほっこり系だと思って読んでしまう読者もいて……。でも彼らがいるのは前線なので、普通に死んでいくんですよね。そういうのをちゃんと書いたら「思っていたのと違う」みたいな感想があって。いや「戦争だからこれ!」と言いたくなりました。「戦争の状況でもおいしいご飯を食べる系の話だと思っていた」みたいなこと言われても、そんなわけないでしょと。

山崎:そのリミッターの外し具合はすごく難しいですよね。ゴジラでそれをやっていいのか……。子供が見られなくなっちゃったらかわいそうだし。