感性のアップデートを続ける
深緑:最近は映画が劇場の大画面ではなくスマホやタブレットで見られがちになったり、小説も〈短い時間で泣ける〉みたいな本にニーズがあったりして、この先、しっかり土台を作って時間をかけた〈大きな作品〉が生き残っていけるのかどうか不安に感じることがあるんです。私もたくさん調べ物をして書くほうなので、そういうのが受けないとがっかりしちゃって……。だから『ゴジラ-1.0』がすごく評価されて、興行成績もいいというのを見て励まされました。監督はいかがでしょうか?
山崎:本当に丁寧にやりきった時は、それがお客さんに届くということを信じるしかないと考えています。僕はそっちのやり方なので。映画館の話で言えば、僕の立っているフィールドは、“日本としては大きめのバジェットで映画を作る”ということなので、劇場に見に来たいと思える作品を作るのがある種の使命だろうなと思っています。
今の若い子たちの感性は、僕らが『スター・ウォーズ』なんかで盛り上がった時代の感性とは明らかに違ってますよね。ああいう頑張ってゴージャスに作っているものって、少し古いものになってきているんだろうなと。
深緑:若い子、難しいですね。
山崎:生まれた時からデジタルに囲まれた世代の人たちにとっては、僕ら的に言えばインスタントなものでもタイパがよくて十分それで楽しくて、旧世代がそれに対してネガなことを言ってもびくともしない価値観を持っているわけじゃないですか。そっちも絶対正解だと思うんです。
僕らはノスタルジーとか、自分の仕事との相性の悪さでそういったインスタントなものを捉えてしまうけれど、それで心を動かされている人たちがたくさんいるし、むしろそこにどっぷり入ってしまうと全然楽しいんですよね。感性には変えようのない部分は絶対にあるし、それは大事なことでもあるけれど、一部だけでも現代の感性にアップデートさせていくというのは、僕たちもやっていかなきゃいけないと思っています。