「何かしら重い病気の可能性があるかもしれない」出産直後の“異変”

――実際に出産を迎えた直後のりおなちゃんはどのような状態でしたか。

佳寿美 パッと見たときは、異常がないように見えたんです。でも、息を吸うたびにゴロゴロと音が鳴っていて。お医者さんから「赤ちゃんの呼吸が苦しい状態です」と言われて、そのままNICU(新生児集中治療室)に連れて行かれました。

――どこかに異常があった?

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佳寿美 あごが小さくて、かつ後退していたんです。さらに、口の中の天井(口蓋)に穴が開いている「口蓋裂」でした。

出産直後に「口蓋裂」が発覚する

――出生前診断で異常がなかっただけに、ショックが大きかったのでは。

佳寿美 元気な子が生まれてくると思っていたので、「まさか」というか。本当にショックでした。

 あごが小さかったり、口の中に穴が開いていたりするのを「ピエール・ロバン症候群」と呼ぶんですけど、その症状は、何かの病気の一部だと説明されて。だから、「もしかして、何かしら重い病気の可能性があるかもしれない」という不安もありました。

――その後、どのように治療していったのですか。

佳寿美 NICUを出たあとは、GCU(新生児回復室)に移されて。私が退院したあとも、りおなはGCUで入院生活を送っていました。

まったく哺乳できないため、冷凍した母乳を鼻から流し込んでいた

——病院に通って面会していた?

佳寿美 そうです。面会だけじゃなく、冷凍した母乳を届ける必要もあって。2か月くらいは、毎日片道1時間以上かけて病院に行ってましたね。

——なぜ冷凍した母乳を届けていたのですか?

佳寿美 最初は授乳していたんですけど、授乳前後で体重がまったく変わらなくて。口の中に穴が開いているために、まったく哺乳できていなかったんです。

 そのあと、口蓋裂用の哺乳瓶を使ってみたんですけど、それでも飲めなくて。結局、鼻から胃にチューブを入れて、そこから私が持参した母乳を流し込んでいました。でも、そのミルクも飲んだあとに吐き出してしまう状態で……。

鼻から胃にチューブを入れて、そこからミルクを流し込んでいた

――2か月も毎日病院に行くのは大変ですよね。

佳寿美 お医者さんは「呼吸が安定したら一緒に帰りたいよね」と言ってくれていたんです。私とりおなが一緒に過ごせるよう気を遣ってくれて。でも、なかなか呼吸が安定しなかったんですよね。

 だから結局、私がりおなの鼻から母乳を流し込む方法や、心臓マッサージの方法、呼吸器の使い方を覚えて、自宅でりおなの面倒を見ることになりました。