ウナギの旬は秋から冬にかけてだという。が、大河ドラマにも登場している平賀源内が提唱した(という説のある)土用の丑ではないけれど、夏バテ防止のためにウナギを食べる習慣はかなり古くからあったようだ。『万葉集』にも夏バテにはウナギがいいよ、というような大伴家持の歌がある。
現在のような形で食べられるようになったのは江戸時代になってから。関東平野の干拓が進んでウナギの漁獲量が増え、また蒲焼きに用いる濃口醤油が普及したことで広く庶民にも食べられるようになった。
最近では資源量の減少もあってなかなか手の届きにくいお値段にはなっているけれど、いまも日本人に愛される国民食のひとつであることは間違いない。おかげで全国のあちこちに、ウナギが有名な町がある。ところが、いまではすっかりウナギが名物になっているにもかかわらず、江戸時代には“タブー”だった町がある。静岡県三島市だ。
“タブーだった食べ物”がいつの間にか名物に…「三島」に何があった?
三島は東京駅から新幹線に乗って50分弱という場所にある。伊豆半島の付け根にあって、韮山・修善寺方面に向かう伊豆箱根鉄道駿豆線というローカル線が分かれ、また東京から特急「踊り子」もやってくる。まさに伊豆半島西部観光の拠点都市だ。
といっても、三島駅に停まる新幹線は数本の「ひかり」を除けば各駅停車の「こだま」がほとんどだ。そういう意味では、新幹線駅の中では小駅の部類といっていい。たとえば三河安城駅とか新富士駅と同じような位置づけだ。
が、三島駅の存在感はそうした小駅とはまったく違っている。何しろ、とにかく駅が賑やかなのだ。
お客の数にしても、人口で8万人ほど上回るお隣・沼津駅よりも多い。つまり三島駅はただ伊豆半島西部の玄関口という範疇を超えて、単体でも押しも押されもせぬ観光都市なのである。

