現行の三段リーグでは最年長四段昇段

 続く2人目の昇段者も、残る2戦でマジック1としていた炭崎が17回戦で勝利し、1戦を残して昇段を決めた。最終成績は15勝3敗で、こちらも十分すぎる数字だ。「昇段できてうれしい。2連勝で締めくくれたのは良かったです」と語った。

 そして、この日のもう1つの注目点は、今期の竜王ランキング戦5組で活躍中の山下数毅三段がフリークラス入りの権利を獲得するかどうかだった。最終18回戦で自身が勝ち、競争相手の古井丈大三段が敗れれば2つ目の次点獲得で、フリークラス編入の権利を有することになる。結果は古井勝ち、山下負けで、この日に3人目の棋士誕生とはならなかった。

 齊藤は28歳10ヵ月での四段昇段。これは現行制度では宮本広志六段の28歳2ヵ月を更新する最年長三段リーグ通過者となる。すべての戦いを終えた齊藤に祝意を述べつつ雑談していると「新人王戦、出られるんですかね?」と。新人王戦は奨励会三段が参加できる数少ない公式戦の1つで、齊藤は2020年の第51期で準優勝した実績がある。ところが参加資格の1つに26歳以下という規定があり、齊藤は第55期と現在進行中の第56期には参加していない。

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昇段決定後の打ち上げにて

 もっとも齊藤の心配は杞憂で、27歳以上でも四段昇段から1年以内なら1回は出場できる。前述した宮本六段も、三段時代に一度新人王戦参加資格を失ったが、四段昇段後に参加している。とはいえ、「新人王戦再出場」が相当なレアケースであることは間違いない。

対戦してみたい棋士は「藤井聡太先生」

 オールドルーキーには当然とはいえ、三段リーグで苦悩もあった。2期前の第74回では出だしから1勝6敗と大不振だったし(そこから持ち直して11勝7敗)、第71回リーグでは、最終戦で敗れていたら奨励会退会が決まっていた。「退会の一番を乗り越えられたのは当時のメンタルでは奇跡だったと思います。それまでは昇段や退会を意識し過ぎていましたが、以降は自分らしい将棋を指すように心掛けて、それがうまくいきました」と語った。もっとも、今期のリーグでは前半でこそ自分の将棋に徹していたが、後半になると連勝記録を意識する面も出てきたそうだ。昇段が決まってからは記録更新を目標としていたという。

 

 新記録で三段リーグを突破して、プロとしての目標を尋ねられると「プロの世界はこれからなので、目標のラインを言える立場ではありませんが、一局一局を全力でこれからも挑んでいければと思います」と答えた。対戦してみたい棋士を聞かれると「たくさんいますが、やはり藤井聡太先生ですかね。間近で記録を何度も取りましたが、対局者として実際に体験出来ればと思います」と語った。