多様性の廃止を進めるトランプ政権は、重要なポジションのほとんどを白人男性で固めている。その中でも報道官など目立つ役職になぜ「MAGAビューティ」と呼ばれるような白人女性をつけているのか。そこには明確なメッセージと戦略がある。

第一に、保守的な有権者にアピールするためのイメージ戦略であることは間違いない。FOXニュースなどの、“映え”を重視する保守系ニュース局へのウケもいい。

フェミニズムと戦う「トランプの女たち」

また女性を起用することで、多様性の否定は、すべての女性やマイノリティ排除ではないことも訴えている。つまり、どんな人でも政権の保守的な価値観に共鳴し、イデオロギー的な整合性があれば問題ないというわけだ。

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その女性像は、リベラルのフェミニズム女性像とは異なる意味での自立した女性、戦う女性でもある。報道陣が政権のやり方に厳しい質問を浴びせるたびに、レヴィット報道官が鋭い言葉で返すのはもはや日常になっている。彼女たちはブロンドにセクシーなメークの「戦闘ルック」でトランプのために忠実に戦う。それがトランプの女たちなのだ。

トランプ政権は規制撤廃・社会保障削減を含む政府の劇的な縮小と、高い関税を組み合わせ、「強いアメリカを取り戻す」と訴えている。

関税などがもたらす経済的不安定さが「鞭(ムチ)」としたら、それを補完する「飴(アメ)」として機能しているのが、伝統的キリスト教文化の復興だ。

保守層にとっては懐かしさと安心感に包まれたそのメッセージは、移民排斥やリベラル教育攻撃と結びつき、文化戦争として過熱している。

「経済的に苦しくても、誇りを取り戻せるのなら…」

例えば多くのエリート大学も含む教育機関に対し、多様性の廃止はもちろん、中東研究など特定の学部の縮小などを要求している。従わなければ助成金を引き下げるというわけだ。

また大学では留学生や教授のビザ、グリーンカード(永住権)が次々に剥奪されている。親パレスチナ運動に参加したというのが理由だが、突然拘束されたり強制送還されたりした学生もいる。その対象はほとんどがイスラム系やアジア系などのマイノリティだ。