こうしたうねりをもたらす原動力の一つになったのは、リベラル化する社会に対する保守女性たちの違和感だったと言ってもいい。

若手共和党クラブで話を聞いた女性の1人はこんな不満を口にした。

「大学のある教授は常にリベラルな話ばかりしている。その上選挙の前には皆に対し“ハリスに投票すべきだ”と言い出して、とても居心地が悪かった」

ADVERTISEMENT

近年、LGBTQやマイノリティの権利保護の動きが進む中で、大学キャンパスはアメリカで最もリベラルな場所となっていった。保守女性たちが他と違う意見を持つ自分たちの居場所がないように感じていたのは無理もない。

「守られたくない」女たちのトランプ支持

リベラルが推し進めてきたDEI(多様性・公平性・包括性)の推進に関しても、白人女性は複雑な思いを抱えている。多様性推進は元々、女性やLGBTQ、人種的マイノリティや障害者が公平な機会を得るための方策だったが、実は最も恩恵を受けたのは白人女性である。ところが同時に、同胞であり家族や友達である白人男性が、不当に扱われているという感覚を持つ人も少なくない。

また、女性だからフェミニスト、というレッテルを貼られることへの反感もある。フェミニズムもDEIも「被害者意識から生まれている」とみなす保守女性が多く、自分はその枠に入りたくないという拒否反応が起こることもある。

彼女たちは「自力で成功できる」「性別や人種を理由に特別扱いされる必要はない」という自己責任の強さを理想としている。ただし彼女たちは同じ女性でも「白人」であったために、他のマイノリティ女性よりも社会に優遇されてきたから、自力で成功できたとも言える。しかしこうした「特権の決めつけ」も彼女たちの反感につながる。

確かにトランプには女性蔑視的な言動が目立つ。しかし、リベラル批判やキリスト教的・保守的な価値観を守ることのほうが、彼女たちにとってはずっと重要だったのである。