早川氏はどれだけ配慮し、慎重を期したのか

だが、一難去ってまた一難。発売が次週の月曜日なのに、前の週の役員会で社長が「撮影者の名前を出せない写真集を講談社が出すわけにはいかない」と発言。急遽、発売中止になってしまったのだ。

上の了解はだいぶ前にとってあったのに今さら……と、ガックリ。だが、そこに神風が吹いた。その週の木曜日発売の文春の早刷りが役員たちの間に回ったのである。そこには、「荻野目慶子 自殺した愛人が撮ったヘア写真をフライデー公開!」と大きな活字が躍っていたのである。

再び役員会が招集され、これだけ報じられて出版をやめたら、また何か書かれるかもしれない。それならいっそ出版に踏み切ったほうがという意見が大勢を占めたと、私の上司から伝えられた。

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写真集は20万部を超すベストセラーになり、後に、荻野目は「写真は愛人が撮った」と認めた。

八代亜紀のCDを出したレコード会社の早川氏に問いたい。あなたは八代亜紀のプライベートなヌード写真を出すにあたって、どれだけ配慮し、慎重を期したのか。

そうでなければ、あなたのやっていることは「単なる金儲け」「故人の尊厳を踏みにじる行為」だと断じざるを得ない。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、近著に『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。
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