「舟唄」「雨の慕情」などのヒット曲で知られる演歌歌手・八代亜紀さんが昨年12月30日に、急速進行性間質性肺炎のため亡くなっていたことが分かった。73歳だった。

 昨年9月には治療のため活動休止することを発表し、「少しの間、大好きな歌と絵から離れなきゃいけないのは寂しいけれど、必ず元気になって戻ってきますので待っててね。また皆さまとお会いできる日を楽しみに頑張ります!」とコメントしていた八代さん。当時の記事をあらためて配信する。

(初出:「週刊文春」2023年9月28日号。年齢、肩書き等は当時のまま)

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「8月下旬に体調不良で複数の病院を受診したところ、免疫異常の一種である膠原病にかかっていることが判明しました。少なくとも年内は治療に専念する予定です」(スポーツ紙記者)

ハスキーボイスがコンプレックスだと言っていたが…

 父親の浪曲を子守歌に熊本県八代市で育った八代亜紀(73)。中学を出てバスガイドとして働いたが、歌手の夢を諦めきれず、地元のキャバレーでマイクを握る。その後、父の反対を押し切って家出同然で上京。流れ着いた先は銀座のクラブだった。

五木ひろしとのライバル関係は「五八戦争」と呼ばれた

「同じクラブで歌っていた五木ひろしの紹介で歌手デビュー。『全日本歌謡選手権』を10週連続勝ち抜いて業界の注目を集めた。本人はハスキーボイスがコンプレックスだと言っていたが、そこが他の歌手にはない魅力でした」(音楽関係者)

 120万枚を売り上げた73年の「なみだ恋」など、情感を切々と歌う八代演歌には熱狂的なファンがつく。

「八代のファンにはデコトラに乗るトラック運転手が多かった。当時は菅原文太主演の『トラック野郎』シリーズが社会現象になっており、八代自身も映画に出演したほど」(同前)

日本歌謡大賞でノミネートされ歌う八代亜紀さん(1974年、当時24歳)

 79年の「舟唄」、翌年の「雨の慕情」はともに大ヒット。八代の代表曲として今も歌い継がれる。

「高倉健主演の『駅 STATION』の挿入歌に『舟唄』を推薦したのは健さん本人。ラジオから流れる八代の歌を聴きながら小料理屋の女将(倍賞千恵子)と酒を酌み交わす名シーンが生まれました」(映画記者)