じつをいうと伺ったのは2月中旬だったため、取材時は移転後1カ月ということになる。少し時間が経ってしまったのだが、移転後のお客さんの入りはどうだろう?

「めっちゃ暇やなあって感じ。なかなか難しいですよ。1年もってくれたらええですけどね。まあ、でも、それぐらいシビアですわ。(客数が)半分以下に減ってるんでね。まあまあ減るだろうとは思ってたけど、思ったより減りましたね。きょうなんか1人しか来てないですからね。前のときはもう暇やなあいうても、1日10人は来よったけど。まあ、あのビルだからでしょうね」

「銭ゲバ」オーナーのムヤニーさん

「味園はやっぱりブランドですわ」

 だが味園ビル時代には常連もついていたのだから、やがてお客さんも戻ってくるのでは?

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「いや、全然。みんな味園ビル目当てだから、別にこの店を目指してないんですよ。移転した店はほとんどがそういう話してるから。『半分以下になりましたねえ』みたいな。これからもわからないですね。基本的に(味園は)ハシゴ客なんでね。ハシゴでけへんとなると、やっぱり弱なるんでね。3店舗ぐらい行く人ばっかりやから」

 定着するまでには相応の時間がかかりそうだということは、飲食店経験のない私にも多少は想像できた。しかし現実は、素人考えよりもずっとシビアなようだ。

「(味園がなくなって)行くとこなくなった人が来るかいうと、そうでもなくて。そういう人はいま“ミッテラ(三ツ寺会館)”のほうに行ってるんちゃうかなと。アメ村(アメリカ村)のほうに似たようなビルあるから、もうそっちのほうに。そっちで店やってる人が、『味園で飲んでた人がめっちゃ流れてきてる』みたいにいってたから」

 お客さんが来るか来ないかわからないという状況は、始めて味園で店を開いたときのようだと振り返る。でも、そういう意味では「これから」なのではないだろうか?

「いやあ。でも、あのビルは特殊ですから。あそこは20軒ぐらいから、そのあと増えて40軒になったでしょ。ここはいま、常にマックスですからね。それでここのビルでハシゴするってわけでもないから」

 たしかに同じフロアにはオーセンティックなバーとカラオケバーしかないので、回遊は難しそうだ。

 

「それこそ雨降っててもビルのなかでウロウロできたりとかね。だから、そこが集合ビルの強みなわけで。下の(ライブハウスの)イベントに行ったついでに来るとか、それはやっぱり同じ建物やったからこそですよね。それがなくなるから。もうそういうのじゃないから。味園はやっぱりブランドですわ。けっこうシビアですよ」