1970年代に大阪・ミナミの夜を代表する商業施設となり、2000年代には個性豊かな店舗が2階のテナントフロアを盛り立てた「味園ビル」。関西屈指の存在感を打ち立てるも、2024年いっぱいで各テナントの営業が終了となったことは、11月8日配信の「文春オンライン」の記事で触れたとおりだ。

 数カ月が過ぎたいま、あのときお話を聞いた店舗のオーナーは、どこでどうしているのだろうか? おふたりの現在を追った。

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移転先は旧店舗からわずか50メートル先

 最初に再会したのは、味園ビルのテナントを代表する店である「深夜喫茶銭ゲバ」のムヤニーさん。前回の取材の時点ですでに「次の店舗は決まっている」とのことだったが、訪ねてみれば新店舗は味園ビル沿いの道を東(黒門市場方面)に向かって50メートルほど歩いた左手の雑居ビル。旧店舗からあまりに近くてビックリした。

味園ビルからすぐ近くに移転した「銭ゲバ」

 沖縄そば屋脇の階段を上がり、中2階部分にいきなり現れるマンション入り口を横目に見ながら2階に上がると、すぐ右側に「深夜喫茶銭ゲバ」の看板が。環境は変わったものの、看板のロゴマークを目にすると、通い慣れているわけでもないのに、それでもなんだかホッとする。

 2024年の年明けには「たぶん今年いっぱいで終わり」という情報を得ていたため、そのころから移転先を探しており、結果的にここにたどり着いたのだという。以前はカレー屋だった店舗で、最初に見たときはあまりいいイメージがなかったので一度は断り、別の物件を調べていた。

 ところがゴールデンウィーク明けに味園ビルがなくなると発表されたため、すぐに不動産屋へ連絡して契約を決意したという流れ。家賃がそこまで高くなかったことも決め手のひとつだったそうだ。

店内は味園ビル時代の雰囲気が息づいている

 店内は正面がカウンターになっていて、右側にはソファ席も。全体的にはかなり広くなった印象がある。前店舗でも使っていたJBLのスピーカーも、天井が高いせいなのか音のヌケがいい。深いピンク色の店内照明も味園の店舗と同様なので、“銭ゲバらしさ”が見事に再現されている。

「お店的には僕、こっちのほうが気に入ってはおるんですよ。雰囲気とかも。だからこの状態で味園でやれたらいちばんよかったですね。天井高いから、やっぱり気持ちええですね。やっぱ広すぎず、狭すぎずで、ちょうどええと。人数もそこそこ入れられるし」