石破首相も林官房長官も、農林水産大臣を経験した“農水族”だ。抜本的な対策がないとわかっていながらも、コメの高騰対策を指示せざるを得ない状況なのだろう。
「食管制度の復活」か「たくさん食べる」の二択
こうした背景を踏まえて、令和のコメ騒動を解決するには2つの方法しかない。
ひとつが、先ほど説明した食管制度の復活だ。国内でコメの供給を安定させたいのであれば、安全保障の観点からみても、最終的には国費を投入するしかない。ただしそれには数千億の予算が必要とみられ、すなわち国民がその分の税金を負担するということだ。国民はその痛みに耐える覚悟が求められる。
もうひとつの方法が、コメ市場の拡大である。何度も申し上げている通り、食生活の欧米化により、国内におけるコメの需要は毎年低下し続けている。日本の人口減少が止まらない状況を鑑みれば、5年後10年後コメの消費量がさらに減っているのは間違いない。
コメ農家としても、継続した消費量増加が見込めない中で、先行投資をしてまで休耕田を復活させようとは思わないはずだ。自動車業界に置き換えてみても同じ。今後も車がほとんど売れる見込みのない国で、わざわざ工場を増設するメーカーなどいないのである。
先述したように、市場が大きければ、需給バランスが崩れても大きな価格変動は起きない。コメ市場を拡大するには、国民がコメを食べて消費量を増やすことだ。コメの消費量が今後も増加していく見通しが立てば、コメ農家も増産に向けて本格的に舵を切ることができる。コメを安く買いたいのであれば、とにかく国民がコメをたくさん食べるしかない。
「輸出推進」や「大規模化」でも安くはならなない
ほかに考えられる策として、農家に一定の所得保障をしたうえで輸出を進めるという意見もある。確かに海外市場でも販売すれば、全体の需要は高まり生産量も増えるだろうとは思っている。しかし、国内の流通や価格の問題を解決する方策にはなり得ない。