海外で栽培されているのは細長い長粒種で、日本の短粒種はあまりメジャーな品種ではなかった。しかし昨今の日本食ブームによって、日本のコメやコメを使った食品を提供する海外のレストランが増加。高級米の人気も高まっており、コメ農家は海外の輸出代行業者と提携して高級米の生産に力を入れ始めている。

政府が輸出を積極的に支援すれば、今よりもコメの生産量は間違いなく増える。しかし、よく考えてみてほしい。仮にまた今回と同様のコメ不足が発生したとき、農家は輸出用のコメをポンッと国内にまわしてくれるだろうか。やはり長年かけて信頼関係をつくりあげたお得意さんを優先するはずである。

また、日本の農業は小規模農家が多く、生産性が低いからコメ農家を大規模化するべきだという意見も多い。確かにコメ農家を大規模化できれば、国内向けの安い米をもう少し効率よく生産できる可能性はある。しかしそのためには、国が積極的に金銭的支援をしないと難しい。

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コメ農家の大規模化を実行するとなれば、国内にある無数の土地を集約する必要がある。コメ農家が先祖代々受け継いできた土地であるため、生産の効率が悪いから手放せといわれても、そう簡単に手放せるものではないだろう。であれば多額の費用をかけて国が買い取り、意欲ある農家に長期の契約で貸し出すといった支援の強化が求められる。

いずれにせよコメの自由市場が続く限り、抜本的にコメの価格が大きく下がる可能性は限りなく低いといっていい。

コメ価格は上昇する方向で進んでいく

自由市場で生産性を上げろと高らかに主張するのであれば、国民全体の生活や雇用環境を見直さないと説得力がないと私は思う。

そもそも今「コメ、コメ、コメ」と騒がれているのは、円安によるインフレで国民の生活が苦しくなっているのが原因だ。輸入小麦の価格は上がり、中でもパンメーカーはここ5年の間にすさまじい勢いで値上げを行っている。しかしコメだけは、ずっと値上げをしてこなかった。相対的にコメがとても安くなっているので、パン食だった人たちがコメを食べるようになり需要が殺到。突如として「コメ、コメ、コメ」と騒動が大きくなったのだと考えられる。