選手交代も監督の一存だけでは決められない

 ソフトバンクでは、選手個々の育成プログラムに応じて、試合では、投手なら年間のイニング数、打者なら打席数が決められている。3年後のエース、5年後の4番打者、さらには10年後のレギュラーといった中長期的な計画を踏まえ、選手個々の期待度や成長ぶり、年齢やプロでの経験年数などに応じて、ノルマも“傾斜配分”される。だから試合前にコーディネーターと打ち合わせた上で、この選手には何打席、その後にはこの選手を守備から出して、残りイニングで何打席といった目安も立てる。

 そのプランに沿って、監督は試合での選手起用を行う。選手交代一つを取っても、監督の権限だけでは決められない要素が、この育成システムに内蔵されているのだ。

斉藤和巳

「球団がコーディネーターをつけて、統括している。そこで各ピッチャー、キャッチャー、内野、外野、バッターなど、将来のチームをどうしていくのか、という方向性を作り上げている。そこで一人一人の選手にフォーカスして、今、何が足りないかというのをやってもらっている、と僕は信じている。技術的なことを監督が言うと、立場的に絶対になってしまう。

ADVERTISEMENT

 全く言わないわけではないが、たまにしか言わないです」

 斉藤の実績からすれば、例えば投手の指導をすれば、それはどんな実績のあるコーチ以上に、説得力を持ってしまう。プロ野球の世界とは、実績で語られる世界でもある。

 だからといって、遠慮するわけではない。

 チーム作りの観点から、フロントは中長期での育成プログラムを組む。さらに最新鋭の機器によるデータ分析、動作解析から、選手個々の練習メニューも組まれる。そうした調整はコーディネーター主導であるが、それを日々の練習、あるいは試合に落とし込みながら、進捗状況をチェックしていくのは現場の監督とコーチ陣になる。

 その管理と調整における4軍の総責任者が、斉藤の役割というわけだ。