「ヨーコはキャリアの初期のころから、観衆の参加行為を促し続けてきました。参加によって目の前に小さい変化を起こし、それが巡り巡って世界を大きく変えていくと信じ、実践してきたのです」

 ということは、だ。オノ・ヨーコ作品を実地に味わい理解するには、観る側の参加意識が何より大切ということになる。

「そうです、まずは作品に参加してみること。さらには、作品のタイトルに注目してみるのもいいでしょう。言葉を大切な表現手段と考えているヨーコらしく、どの作品にも美しく詩的なタイトルが付いていて、そこに作品を読み解くヒントが含まれていることは多いです」

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日本で培われたオノ・ヨーコの想像力と創造力

 六本木、天王洲の両会場を巡っていると気づく。コインや包帯、ガラス瓶など、オノ・ヨーコ作品の素材には、日常のものが多く使われていることに。それもヨーコの創作の特長だと、コナー・モナハン氏は語る。

「身近なものからインスピレーションを得て、想像を広げていくのは、ヨーコのいつものやり方です。代表的なものは、青い空です。空というのは見上げればいつもそこにあるもので、同時に過去から未来にかけてずっと存在するものでもある。身近な空を見上げることは、永遠の美しさについて考えることにつながります。それでヨーコはこれまで、空をモチーフにした作品をたくさんつくってきたのです」

 世界中で活動を展開してきたオノ・ヨーコにとって、今展のように日本で個展を開くことは、特別な意味を持つのだろうか。

「生まれ故郷である日本が、ヨーコにとって重要な地であるのはもちろんです。とくに彼女の原体験には戦争の記憶があり、それを体験したのが日本だったという事実は大きいと思います。これまでさまざまな土地に身を置いて活動してきたヨーコですが、創造的なアイデアの多くは日本で得ています。ヨーコの気持ちに寄り添える日本の観客のみなさんに、彼女の作品をじっくり楽しんでいただきたいです」

 そう、オノ・ヨーコは第二次世界大戦中、東京から長野への疎開を経験している。疎開先でお腹を空かせた弟を元気づけようと、ヨーコは料理の献立を空想して、姉弟で飽きることなく語り合ったという。「想像してごらん」というヨーコの創作の根本原理はここに生まれ、のちにジョン・レノンの楽曲「イマジン」にも反映されていったのである。

 都内2か所で展開するオノ・ヨーコの作品に触れて、想像力を存分に羽ばたかせてみたい。

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オノ・ヨーコ「A statue was here 一つの像がここにあった」
6月10日~7月5日
小山登美夫ギャラリー六本木
小山登美夫ギャラリー天王洲
https://tomiokoyamagallery.com/

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