佐々木、高見、三枚堂は、両対局者との交流がある。高見と三枚堂は斎藤と同じ1993年生まれで(佐々木は1994年生まれ)、ABEMAトーナメントで斎藤に指名され、「チーム1993年生まれ」を結成したこともある。佐々木も昔、斎藤と練習将棋を指すためだけに関西に遠征したことがあり、3人とも斎藤ととても親しい。
その一方で、3人とも伊藤と研究会をしている。佐々木は伊藤が三段のときからその実力を見いだしていた。高見はABEMAトーナメントで藤井聡太・伊藤と組んで優勝したことがある。つまり、両対局者とチームメイトになったことがあるのだ。
そして大盤解説会が始まった
三枚堂は「浦安市PR大使」を務めており、第4局の浦安対局でも解説を担当していた。そのときのことを聞いた。
「感想戦を終えた後に斎藤さんと話をしまして、『伊藤さんは粘り強いなあ』って言っていました。私も研究会で伊藤さんと指すと、たいていこっちが攻めて、あっちが受けてという展開になるんですが、いつも受け切られます(笑)」
さて本局、手順の前後はあれどずっと前例通りに進み、未知の局面となったのは13時38分であった。手を変えたのは後手の伊藤で、佐々木大地戦での藤井は中央に銀を出し飛車を転回したが、伊藤は右桂を跳ね出した。斎藤の銀引きののち、伊藤は左桂も跳ねる。桂は跳ねると後戻りできない。攻撃目標になるのは承知の上で、覚悟を決めた手順であった。
午後2時、伊藤が左桂を跳ねたのとほぼ同時に大盤解説会が始まった。400席以上が満席、最前列のS席(対局開始時観戦と門倉の特別解説付き)は秒で売り切れたそうだ。人気者の解説者3名に解説名人の立会人に若手理事と、持ち駒が多すぎるため、30分で解説者や聞き手を交代し、1時間おきに休憩するスケジュールが組まれた。
「糸谷先生は今日はどうしてここに?」
木村は佐々木とのペア解説で、和服のまま登壇し、得意の名調子で会場の笑いを誘った。
「伊藤さんも斎藤さんも私も、白瀧さんに和服をお願いしているので、色が被らないようにしてくれております。違う呉服店だと被ってしまう可能性があるけれど、(対戦相手に)『ねえねえ、次の和服は何色にするの?』って聞くわけにもいかないし(笑)」
「伊藤さんとは、私も佐々木さんも一緒に研究会をしている。今は最上位の伊藤叡王が昼食代を払ってくれている。我々の昼食代にとっても大きな一番です(笑)」
糸谷も登壇した。高見が、「先生は今日はどうしてここに?」という問いかけを受けて「理事枠です。負けた枠ではありません」と答えた。糸谷は、叡王戦本戦トーナメント準決勝で藤井聡太を破ったが、挑戦者決定戦で斎藤に敗れているのである。
それにしても皆、ネタが豊富で話がうまいうまい。とても書ききれるものではない。加藤も自ら得意とする相掛かりになったということで、おしゃべりな兄弟子に負けじとしっかりと受け答えした。
写真=勝又清和
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