上野 フィッシャーの将棋は、普段以上に終盤になると二転三転します。そういう極限の中で戦う棋士の姿や指し手を見てもらいたいですね。昨年の優勝はチームメイトの稲葉先生と藤本君が要所で勝ってくれました。稲葉先生は自分を前半で出してくれることが多く、その点では伸び伸び指せたので、いい結果につながりました。ABEMAトーナメントに出てくる棋士はトップクラスの方ばかりなので、そういう相手に結果を残せたのは自信につながります。

 

――収録の関係上、1日に最大6局指したこともあったとお聞きします。

上野 1日に6局指すということ自体は、間に休憩もあるのでそこまで疲れるということはありません。ただ全体の収録が長時間なので、朝早くから指すこともあります。そういう状況だと頭がまわっていないんですね(苦笑)。フィッシャールールを初めて知った時は興味を持ちましたし、実際に見てみるとスピーディーでより面白いと思いました。ただ自分が指してみると、残り1分を切るとあっという間に時間がなくなる印象で、常に何かに追われている感じです。控室でチームメイトの戦いを見ているほうが楽しいです(笑)。

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――個人の戦いが多い棋士が、チーム戦を戦うということはいかがでしょうか。

上野 棋士のチーム戦は珍しいですよね。チームの存在で救われる部分もあれば、自分が足を引っ張って落ち込む部分もあります。昨年は優勝できたのでチームに貢献できたと思いますが、足を引っ張った時が怖いですね。

これからは藤井先生と争っていける棋士に

――改めてこれからの戦いについてお聞きします。まず、年齢で言いますと、上野さんの1歳上に藤井竜王・名人がいます。藤井竜王・名人より若い世代の棋士はまだ公式戦を指した数が少ないながらも、上野さんをはじめ実績を挙げられている方がおり、ポスト藤井世代という期待もかかるのではないかと思います。

上野 藤井先生より若い世代が頑張っていくことで、将棋界が盛り上がっていけばいいですね。私は藤井四段の頃から「すごいなあ」という感覚を持っていました。私が四段昇段した時は八冠ですからね。遠い存在という印象でしかありませんが、これからは藤井先生と争っていける棋士にならなくてはいけないと思います。とは言え、いきなり戦うのは無理なので、まずは各棋戦でコツコツ勝ちあがっていくしかありません。目の前の一局を準備して、精一杯指していくということになります。

 

――特に最近の若い世代の棋士は、AIとどう向き合っていくかということも課題になるのではと思います。