2025年3月、順位戦C級2組の最終局で勝利して、C級1組への昇級と五段昇段を果たした上野裕寿五段(22)。5歳で将棋を始め、小学校6年生で奨励会入りしたものの、在籍8年間のうち5年は三段リーグで苦闘する日々だった――。

 プロデビュー直後には若手棋士の登竜門である新人王戦を制覇して、翌年には地元・加古川市で行われた加古川青流戦でも優勝を果たした新鋭に話を聞いた。

上野裕寿五段

師匠・井上慶太九段との出会い

――順位戦昇級おめでとうございます。今回は次代の将棋界を担う旗手の1人として、上野さんにいろいろとお話をお聞きしたいと思います。まず、将棋を始めたきっかけはどのようなものでしたか。

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上野 5歳の頃、アマ二段くらいの父から教わりました。当時のことはハッキリと覚えていませんが、近くの子ども教室に通うのも楽しく、続けられたのかなと思います。

――上野さんは兵庫県加古川市のご出身ですが、同地の棋士と言えばのちの師匠である井上慶太九段がいます。井上一門へ入門した頃のことを教えてください。

上野 子ども教室ではだいぶ強くなっていたので、さらに上のクラスを目指すことに。加古川なら師匠の道場になるのかなと。今までの教室とは規模もレベルも違いました。初めて道場へ行った時は、雰囲気に圧倒されて泣き出してしまいました。

――その当時のエピソードについては、上野さんが四段昇段を果たした時に、井上九段からお聞きしました。上野さんの詰将棋を解くスピードに井上九段は感心したそうですね。

上野 詰将棋は、子ども教室の宿題で繰り返し解いていました。詰将棋や将棋の本を読むのは好きでしたね。でも当時の自分は人見知りだったので、他の人と指すのはハードルが高かったです。小学校へ入学してからは友達も多くできて、井上教室にも普通に通えるようになりました。