戦いを重ねていくうちに強くなった

――上野さんの三段リーグ在籍は第64回から10期、5年間にわたりました。

上野 三段リーグはホントに厳しいところという印象しかありません。私の奨励会在籍は8年ですが、そのうちの5年ですから。実際、四段昇段までこんなにかかるとは思っていませんでした。二段までは終盤で逆転勝ちすることが多かったのですが、三段は終盤の精度も高く、序盤研究も練られています。研究にハマって相手の思うがままに進められてそのまま負けたこともあります。

 中学生で三段になった時は地元の新聞にも取り上げられて気合が入っていましたが、いきなり降段点(4勝14敗)で不甲斐なかったです。こんなにきついのかというのが正直な実感でした。

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――ただ、その後は割とリーグでも安定した成績を挙げられていた印象があります。

上野 三段リーグでの戦いを重ねていくうちに強くなったという感じですね。転換期は高校を卒業してからでしょう。大学へは行かず、空いた時間を将棋の勉強に充てられたのが大きかったです。関西将棋会館での研究会も増えました。大学との両立は難しいと思っており、どっちつかずになるのはよくないなと。四段昇段直前の数期はリーグでも常に昇段争いに加わることができました。それが自信になりましたね。

 上がったリーグ(第73回)では、指していても相手より自分のほうが強いという感覚がありました。その1期前は最終戦で勝てば昇段という状況で、それもわかっていたんですけど、何かフワフワしており、落ち着いて指せませんでした。負けた直後は呆然状態で将棋会館の中をふらふらしていましたね。帰りの新幹線の中でもボーッとしていましたが、帰宅して1人になると悔しさがこみあげてきて、泣きました。