上野 (苦笑)。自分が指した将棋の中では、これまでで一番ひどいんじゃないかと思うウッカリですね。あの将棋は途中で相手が桂馬を自分の桂馬にぶつけてくる順を考えていました。そうじゃない手を指された瞬間に、なぜか相手の桂馬の存在が頭から消えており、実際の将棋盤でも見えていませんでした。自分の認識では角を打って勝ったつもりだったので、谷合先生の指が角に伸びてくるまでまったく気付いていませんでした。
――また、今期の竜王戦では山下数毅奨励会三段の活躍にも注目が集まりました。上野さんは三段リーグで対戦もありますね。
上野 山下三段は竜王戦で強敵に勝ち、内容も安定している印象です。彼の実力でしょうね。三段リーグでの対戦は1勝1敗ですが、私が四段へ昇段したリーグでは負かされました。終盤の正確性を対局して感じましたね。ちなみに、研究会で山下三段と指したことはありません。
タイトル戦の本戦入りに向けた課題は…
――改めて、今後の目標をお願いします。
上野 竜王戦ランキング戦も惜しいところまでは行っていましたが、私はまだ各タイトル戦の本戦(決勝トーナメント、リーグなど)入りしたことがないので、まずはそこが目標です。もちろん最後はタイトル奪取を目指して頑張っていきたいですね。決勝などの大一番では普段より気合が入りますが、それが必ずしもいいことかというとそうでもないので、難しいです。
あと、師匠の姿を見ていると普及にも熱心ですよね。子どものころから近くで見てきたので、自分も普及の力になりたいなと思います。プロになってからの普及活動は将棋大会の審判や指導対局などですが、子ども相手に指導をするのは楽しいです。大会に参加するお子さんたちが楽しそうに指している姿を見ていると、うれしくなってやりがいを感じますね。喜んでくれているからには、自分も少しは普及に貢献できているのかなと考えます。
公式戦で勝つための具体論を言いますと、先手では得意の矢倉を選ぶことができて、勝率も残せていますが、後手で相手の作戦を受けて立つ構図では苦労しています。特に角換わりの将棋だと研究だけで持って行かれる可能性もあり、それが怖い。後手番での工夫をどうするかというのが現状の課題です。
――どうもありがとうございました。
写真=深野未季/文藝春秋
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