横たわっていたのは行方不明になっていた男性。氷点下近い気温で体が冷えて動けない状態だったという。奥木さんは声をかけ、すぐに署員へ連絡し救急車の手配を行った。

 現場は自宅から約120mという距離だが、藪によって捜索できていなかったという。かかった時間は45分ほど。ウタ号によって無事に発見することができたのだ。

ご褒美のおもちゃに喜ぶウタ号。訓練後のウタ号の楽しい遊びの時間が始まった

犬にとって作業は遊びの一環

 ウタ号の訓練では、警察犬の基本訓練とされる「服従訓練」が行われていた。ウタ号は「アトヘ」「スワレ」「タッテ」などの指示に正確に反応する。

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服従訓練中のウタ号。指示にあわせて座って待つ

 この服従訓練は、信頼関係の構築や、現場での安全管理、どんな場所でも冷静に行動できるようにするなど、大きな意味がある。また「臭気選別」「足跡追及」など実践的な訓練も行われている。

ウタ号の「臭気選別」の訓練。嗅いだにおいと同じにおいの布を選ぶ

 ウタ号を見ると、楽しそうに訓練に取り組んでいる。鑑識課課長代理で警察庁指定広域技能指導官を務める赤坂一彦警視は「犬にとって作業は遊びの一環」と語る。

「服従訓練をいかに生き生きできるか、名前を呼んでしっかり来るか。基本的な訓練の取り組み方でその先にある足跡追及や捜索訓練の技量にも差が出ます」(赤坂さん)

投げられたおもちゃを追いかけるウタ号。動きは軽やかで元気がいい

 訓練は嫌なことではなく楽しい作業であり、「この担当者に褒められたい」という信頼関係を構築することが現場で力を発揮する大きなカギとなる。