1969年(89分)/東映/3080円(税込)

 現在、脚本家の高田宏治氏のインタビュー本を作成中だ。

『忍者狩り』『十兵衛暗殺剣』といったハードボイルド時代劇に始まり、『シルクハットの大親分』などの異色任侠映画、『実録外伝 大阪電撃作戦』などの実録やくざ映画、『激突!殺人拳』といった空手映画、さらに五社英雄監督との『鬼龍院花子の生涯』『極道の妻たち』に『野性の証明』『復活の日』という角川大作と、その長年にわたるキャリアで残してきた作品は多岐に渡る。九十歳を超えている現在でも全くパワフルで記憶も鮮明、結果としてインタビューは過去最長の五十時間を超えた。先日、そのまとめ作業がようやく終わったので、しばらくは高田脚本作品に焦点を当ててみたい。

 今回取り上げる作品は『賞金稼ぎ』だ。伊上勝との共同脚本になっているが、高田によれば、設定や人物名は伊上が考えたものの執筆に詰まって降板、高田がピンチヒッターとして入って物語の大半をまとめ上げたのだという。高田は『忍者狩り』のようにオリジナルで書いた作品もあるが、このように助っ人として途中参加して作品を完成させることも得意としていた。

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 舞台は江戸中期。薩摩藩がオランダから新式銃の買い入れをしようとしているとの情報を入手した幕閣は、その証拠を掴んで薩摩を取り潰すべく隠密を派遣する。一方、争いを望まない将軍家重(鶴田浩二)は取引を阻止するため、子飼いの剣客・錣(しころ)市兵衛(若山富三郎)を派遣した。

 物語は薩摩に潜入した市兵衛の活躍が、若山の身体能力を活かしたアクション満載で展開される。ただ、それだけではない。一見すると残虐な組織に思わせて、実は主君想いの忠節心にあふれている、桜島を根城にして取引を主導する武闘派集団・山嶽党。野心のためではなく誇りのために幕府に歯向かおうとする藩主(高橋昌也)。敵側にもドラマがあり、単純な悪役として描かれていないため、実にカッコいいのだ。こうしたキャラクターの立たせ方こそ、高田脚本の本領発揮といえる。

 中でも圧巻は、片岡千恵蔵の演じる薩摩藩江戸家老・伊集院右京だ。取引を中止させるために帰郷し、市兵衛と共闘するのだが、主君の真意を知り変心。一転して市兵衛と対峙することになる。本心をひた隠しにしながら我が身を捨ててでも自身の任を果たそうとする大石内蔵助ばりの男を、千恵蔵が大熱演。市兵衛との決闘シーンでは、若山を圧する闘気を発してのけていた。

 こうした、スターがノリノリで演じたくなる見せ場こそ、東映時代劇における脚本家の腕の見せどころ。その腕前を高田は存分に見せつけたのだ。