「ツチハンミョウ」が縁で仲良くなった著名な生物学者と生物画画伯。秦野で繰り広げられる大人の昆虫採集の後編です。本気モードです。(前編よりつづく)

山頂で語り合う2人 左から舘野鴻さん、福岡伸一さん ©三宅史郎/文藝春秋

先輩から口伝されるとっておきの昆虫捕獲方法とは

福岡 舘野さんは北海道で暮らしていらしたんですよね。

舘野 そう、大学のときに。最初は江別にいたんですが、その後札幌に移って。

福岡 すし酢を使ったトラップでオサムシを採ったというのは、そのころ?

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舘野 そうですね。粉状の、酢飯を作る時に混ぜるやつをプラスチックコップに入れて、土に埋めておく。

福岡 虫をおびき寄せるために、いろんなものを作りますよね。なぜか虫好きの先輩とかから「口伝」で伝授される。私も黒糖にお酒を混ぜてトロっとするまで煮詰めたものを樹に塗り、クワガタやカブトムシをおびき寄せていました。

舘野 (生えている草を見て)あ、これはルリタテハの食痕かな?

福岡 なんという草ですか?

舘野 シオデという山草で、「山のアスパラガス」というくらい美味しいんです。

福岡 やっぱりチョウも美味しいものが好きなんだな。お、これはゾウムシ。養老孟司先生が集めている「鼻くそ」みたいなやつ(笑)。

舘野 ゾウムシとはまた、ニッチですね。