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信者を集めて年収1千万? カルト化するネトウヨ商売の闇

安田峰俊×古谷経衡が語るネトウヨ最前線

note

遊び心を失ったネトウヨ

安田 話が変わりますが、いわゆるネット右翼の姿が以前とは変わってきている印象があります。

古谷 具体的にはどういうことでしょう?

安田 ゼロ年代までのネット右翼って、『2ちゃんねる』あたりの不謹慎文化の延長にあったと思うんですよ。本気で排外主義を唱えていたというより、世間のきれいごとや戦後日本の常識を揶揄したり、マスコミや広告会社のヤラセをぶち壊したりすることにウエイトを置いていた印象です。不謹慎ネタが好きなネットのオタクたちがアーリーアダプターだったというか。

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 たとえば、フジテレビが湘南ゴミ拾いイベントを企画しているので事前にみんなで湘南を掃除して企画倒れにしてやれ(2002年、湘南ゴミ拾いオフ)とか、24時間テレビのマラソンランナーがズルしてショートカットしないか追跡してやれとか、そういうノリの延長線上で反ポリコレ的な言説もおこなわれていた。だからといって排外主義的な言説に免罪符が与えられることは一切ありませんが、少なくとも遊び心のようなものが存在したことは事実です。

往年の2ちゃんねる「湘南ゴミ拾いOFF」(https://2ch.live/cache/view/nanmin/1025961678)。フジテレビへの抗議が目的だが、茶目っ気のある行動だった。

古谷 なるほど。同感です。在特会などの「行動する保守(自称)」が表舞台に登場してから、ネット右翼の質は劣化したと思います。それまでの、ネットのオフ文化が持っていた丸い部分や遊びの部分が一切なくなって、ものすごく一直線にヘイトをやるようになった。

 これに対して、保守ムラの言論人や一部の議員も、ネット上で手っ取り早く賞賛を集めるために論調を過激な方に転換した。結局、穏健でまだしも遊びのあるネット右翼というのは「サヨク」認定されて駆逐され、あるいは沈黙してしまって現在があるわけです。

安田 転機はおおむね2008年ごろでしょうか。在特会やチャンネル桜系の運動団体(2010年に設立される「頑張れ日本!全国行動委員会」の前身)の活動家たちが、ネットの右派言論をある程度は反映する形で街頭に出るようになり、それが動画サイトで拡散されるようになった。これによって、オタクの不謹慎ネタが政治運動に変わり、さらに従来の高齢者層の保守言説(『正論』『諸君!』的な立場)の末端部分とも融合を始めた。ネタじゃなく本気で排外運動をやりたい人たちがメインになった感じです。

古谷 かつて小林よしのり氏は、戦後民主主義的なサヨクを「純粋まっすぐ君」と命名しましたが、それの完全なる右バージョンの誕生ですよね。