養子縁組のあっせん団体から受け取った長男のへその緒を本人に見せたときのこと。「産んでくれたお母さんの栄養分がここを通じて流れてきたんだよ」と話した。池田さん夫妻もそれぞれのへその緒を持っており、桐の箱に入った3人分のへその緒を並べて、大いに盛り上がった。
一方、長男とは、妊娠7カ月で亡くなった池田さんの長女のお墓に一緒にお参りしている。「お姉ちゃんは生まれる前に亡くなったと伝えました。息子は『死ぬ』『生まれる』がどんなことか、理解しています」。
「なぜ子供がほしいのか」を徹底的に自分に問いかける
同じあっせん団体だったことで知り合った他の特別養子縁組の家族とはピクニックに行くなど、交流を続けている。真実告知の伝え方は年齢によって変化するため、日常のちょっとしたことも含めて相談し合う。同じ立場の子ども同士のつながりも作ってあげたいと思う。池田さん夫妻は著書『産めないけれど育てたい。 不妊からの特別養子縁組へ』(KADOKAWA刊)に記し、自分たちの体験を伝えている。
池田さんは、特別養子縁組を考えている人には、どうして子どもがほしいのか、徹底的に自分に問いかけてみるようアドバイスする。「とても大変な作業かもしれないけれど、自分と向き合って、自分の不妊に決着をつけてほしい。そうすれば自分が本当に求めているものが見えてその先へと踏み出せます」。
池田さんによると、「子どもがいる人と区別されたくない」という思いを心の底に抱えたまま特別養子縁組に進んでしまうと、今度は「血縁のある家族と区別されたくない」という別の悩みを抱えることになる。「特別養子縁組を周囲に明かせないようなら子どもに真実告知を行う年齢も遅くなり、悩みがさらに深くなってしまいます」。
池田さんには、不妊治療を終結してその先に行く人たちに提案がある。「子どもをあきらめたことについて触れないまま日常生活は進んでしまいがちだけど、夫婦で(節目の)『儀式』を行ってみては? 涙を流して話してもいいし、言葉は交わさずにハグするだけでもいい」。