若い世代にも不妊治療や養子縁組について知ってほしい

池田さんは、特別養子縁組で子どもを迎えた当事者として、大学生に講義を続けている。

「若い世代には、不妊治療も特別養子縁組も実感を持って感じにくいかもしれません。でも、もし自分がいつか子どもを持ちたいけれど持てないかもしれないと思ったときに、そうした選択肢があることを思い出してほしい。その手助けになれば」

若い世代は特別養子縁組についても先入観がない。ある日、講義の時間に長男の世話をしてくれる人を頼めず、授業に息子を連れて行ったことがあった。長男が池田家にやって来た経緯を知る大学生たちは、「かわいいですね」とにこやかに迎えてくれた。

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そうした反応は地元でも同じ。近所の人たちには特別養子縁組で子どもを迎えたことを包み隠さずに伝えてきており、周囲の反応は温かい。特に若い世代から「すてきな制度だね」と言われると、池田さんは「いろいろな家族のあり方を受け入れてもらえてうれしい」と感じた。

あまり知られていないが、特別養子縁組のあっせん団体には「夫婦ともに子どもとの年齢差が45歳差まで」といった年齢制限を受け入れる家族側に設けているところがいくつもある。池田さん夫妻は長男を迎えた後、二人目も育てたいと考えたが、登録するあっせん団体では二人目でも年齢差の条件は変わらず45歳だったため、あきらめた経緯がある。

息子には養子であることを伝えている

特別養子縁組では、養親から子どもに養子であることを伝える「真実告知」が重要なプロセスと考えられている。池田さんは長男を迎えたその日から、育ての親の自分たちのほかに、生みの親がいることを長男に伝えている。

長男は、物心がつくまではすべての人にお母さんは2人いると思っていたが、やがて友達のお母さんたちが出産して家族が増えていく様子を見て、子どもを産んだ人が育てる場合が多いことを少しずつ理解するようになっていったという。