「闘魂三銃士は同じ日に入門している(1984年4月22日)。橋本選手は武藤さんと俺より1週間くらい早く入ってたとよく言われるんだけど、俺の記憶では同時だね。俺が道場に着いた時に橋本選手はもう着替えて待ってたから、先に入ってたといえばそうなんだけどね。この初日の合同練習の時に、ある先輩が俺と武藤さんと橋本選手を前に出して『今日から入った3人だ』と紹介してくれたことを覚えてるよ。で、その初日から俺と橋本選手はケンカするという(笑)」
入門初日から洗濯機をめぐって大喧嘩
当時の新日本道場は昭和のニオイが色濃く、新弟子は常軌を逸した練習などでふるいにかけられ、夜逃げする者が絶えないという状況だった。
「道場のいちばん下っ端は洗濯番をするんだけど、まずはそのやり方を直の先輩から教わる。当時の道場には洗濯機が2個しかなくて、乾燥機がその上に設置してあるんだけど、使用中だったら、乾燥機の前に自分の洗濯物を置いて場所取りをするんだよ。俺が見た時はまだ乾燥中だったから、その次ということで洗濯物を置いて場所取りをしておいた。しばらく経ってから様子を見にいったら、まだ回ってる。誰かが俺の順番を飛ばしたんだよ。
それで頭にきて『ふざけんな! 誰が勝手に入れたんだ?』と大声出したら、橋本選手がスッと近寄ってきて『俺だよ。悪いか?』。それで『なんだコラ!』とつかみ合いのケンカになって、先輩が止めに入った。俺も要領がいいほうだけど、コイツはそれを超えるくらいのズル賢い野郎だな、というのが、俺の橋本選手に対する最初の印象だったね」
新弟子時代から貪欲で野心家だった橋本
橋本は1965年7月3日生まれで、蝶野は1963年9月17日生まれの橋本より2つ歳上、武藤は1962年12月23日生まれで3つ歳上だった。
「俺と武藤さんのほうが歳上なんだけど、橋本選手は『同期は同期』という気持ちが強くて、すぐに『蝶ちゃん』『ムトちゃん』という呼び方をしてきたね。だけど、このくらいの年齢の時の2〜3歳差ってけっこう大きいんだよ。