エミン 投資界隈がSNSで盛り上がっているから国民的に広がっているように錯覚しますが、本当の投資ブームが起こるのは今後日本人が「デフレマインドからインフレマインドへ」頭が切り替わったときです。そのとき本格的な株高がやってきます。

 インフレ時代には現預金の何割かを株にしておく必要がある――日本国民はいずれそれに気づいてどっと株を買いに走る。

 相場のプロたちはそれをわかっているので、先回りして仕込んでいるわけです。株に対して慎重な人は、「4万7000円で買うのは割高じゃないか、躊躇します」といいます。日経平均が3万円前後のときも、同じことを言っていましたね。でも、僕は日本の株は将来的に30万円いくと分析していますから、3万で仕込もうが5万で仕込もうがまだ誤差の範囲なんです。

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良いバブルと悪いバブルがある

――日本人がなかなか投資マインドに切り替わらないのは、1990年代のバブル崩壊や2008年のリーマン・ショックで手痛い目にあった人も多いからではないでしょうか。

エミン 気持ちは理解できます。ここで重要なのが、歴史を見ると明らかですが、同じバブルでも「良性のもの」と「悪性のもの」があるということです。マネーの流動性が高く投資が加熱化すると、技術革新を大きく推進する良い面もあり、これはいわゆるテックバブルです。

 例えば19世紀イギリスでの鉄道バブルも、1920年代アメリカでの家電バブルも、1970年代の半導体バブルもマネーが一挙に集中し、バブルが弾けたあと多くの企業が倒産しました。でも、そのおかげで技術は大きく進展し、生き残った企業はその後、世界のライフスタイルを一変させました。

 ところが不動産バブルは悪性で、有益なものをなに一つ残しません。サブプライム・ローンの焦げ付きに端を発したリーマン・ショックは、世界的な金融危機を招いたのはご存知の通りです。日本の不動産バブルのピーク時には銀座の一等地に1坪3億8000万円の評価額がつくほどの狂乱を見せましたが、バブル崩壊後、莫大な不良債権を抱えた日本の銀行は、貸し出しを厳しく渋りました。

 世の中にIT革命によってディスラプションが起こっている時代に、日本は新しい技術開発や設備投資にマネーを回さずに“縮小モード”に入ったので、完全に乗り遅れ、その後長きにわたる低迷を招くことになったわけです。

エミン・ユルマズ氏

――必要なタイミングでマネーが回らなかった、と。

エミン これは明治時代に、銀行が企業に貸し出したお金を国家が保証して、積極的に融資を行うようバックアップした状況とは真逆です。金融システムの本来的な役割は、「お金が正しいところに流れ、そこに社会的リソースを集められる」ことにあります。必要なところに血液が流れなければその部分が腐敗するように、国家もまた正しいところにお金が流れなければ内部から腐敗がはじまる。文字通り、お金は文明の“破壊と創造”を担っているのです。

「すべてのバブルは弾ける」のが歴史の法則ですが、その中にも良いものと悪いものとがある。そこを見極める歴史知があれば、過度に恐れる必要はなく、適切な投資判断もしやすくなるでしょう。