文明社会を形作ったマネーの本質
――マネーの本質が浮き彫りになるスリリングな知見ですね。
エミン お金の本質を考えるうえで、僕の大好きな『マージン・コール』(2011年)という映画がひとつの示唆を与えてくれます。リーマン・ショック時の金融危機を描いた、ケヴィン・スペイシー主演の映画ですが、そのなかに「マネーなんて、ただの作り物だ。我々が食うために殺し合いしなくて済むよう、絵を印刷した紙切れに過ぎない」といった台詞が出てきます。
つまり「共同幻想」としてのお金を通じて取り引きすることで、互いが自分のニーズのために戦わなくてもよい文明社会が形作られた。「価値の尺度、交換手段、価値の保存」の3つをマネーが可能にしたことで、弱肉強食を超えて、ウェルフェアな社会を実現することが可能になったのです。
富の恩恵を、共同体全体に広く行き渡らせる年金や健康保険の仕組み、医療・教育・交通などの社会的なインフラの整備は、ある意味、金融システムが生んだ人類へのプレゼントとも言えます。
マネーは人間の欲望の「加速装置」として破壊的に振る舞うこともあれば、社会的な再配分を促進し、イノベーションを大きく推進するプラス面もあります。本書では、資源戦争、貿易戦争、基軸通貨戦争、技術戦争の4つの視点で世界史を横断し、マネーの本質を浮き彫りにしました。
歴史的なスケールで大局観をもつと、相場の大きな動向や私たちの社会がどこへ向かおうとしているのかもクリアに見えてきます。激動の時代を生き残っていくための武器を手に入れてほしいと思います。
INFORMATION
刊行記念トークイベント
エミン・ユルマズ氏✕けんすう氏
「マネーの歴史から未来を読み解く!」
11/5(水) 誠品生活日本橋
https://seihin1105moneynorekishi2.peatix.com/



