近年は都市部でも、ワンマン運転が広がりつつある
国鉄の旅客列車でも南武線支線や関西線の一部でワンマン運転が始まったが、本格的な導入は分割民営化してJRとなって以降だ。JR九州で1988(昭和63)年3月に香椎線と三角線がワンマン化。JR西日本も美祢線の南大嶺~大嶺間、山陰本線の長門市~仙崎間でワンマン運転を始めた。JR四国は1か月遅れ、4月から牟岐線や予土線、予讃線と土讃線の一部など7線区でワンマン運転を導入。JR北海道も1989(平成元)年7月から日高本線をワンマン化した。
これ以降、地方私鉄、JRのローカル線にワンマン運転が普及していく。ワンマンバスと同様の運賃箱、整理券発行機、停車駅放送装置が搭載された。安全装置も、運転士が意識を失った場合に列車を停止させる「デッドマンシステム」や、運転指令が駅や車内に放送できるシステムなどが整えられていく。整備コストはかかるけれども、長い目で見れば車掌を省略したほうがいい、という判断があったのだろう。
ローカル線は1両編成か2両編成がほとんどだ。駅に着くと運転士側のドアだけ開き、乗客はきっぷを渡すか、運賃箱に運賃を入れて降りていく。運転士はドアの開閉時は窓から車外も確認するけれども、運転席に座った場合はプラットホームに設置された鏡で安全を確認できる。
しかし、都市部の通勤電車は同じようにワンマン化できない。
運賃の収受を1つの扉で済ませられないから、駅で運賃を処理してもらう必要がある。安全確認についても、5両編成を超えれば見通しが悪くなる。プラットホームがカーブしている駅もある。運転士と車掌が乗務して、運転業務と乗客向け業務を分担するしかない。そのため、都市鉄道にワンマン運転を導入する場合は、先進技術を投入して安全を保っている。乗客もワンマン運転だと知らされなければ気づかないほど違和感がない。
都市鉄道でのワンマン運転を可能にした「東京メトロ」
例えば、東京メトロ南北線は開業当初からワンマン運転を前提として設計された。



